誰にも内緒の観察日記


 自宅から二番目に近い進学校。地域内で一番新しくて、今年で創立十周年らしい。自転車通学するには直前に上り坂があって大変だけど、綺麗な校舎と緩い校則に惹かれてここにしようと第一志望に決めた。

 中学も公立だったから、初めての受験。人生で一番勉強したと言っても過言ではない。可もなく不可もなくな成績だから、最初は進学校なんて難しいんじゃないかと思っていた。だけど、隅田(すみだ)が一緒に合格しようと言ってくれて、自分のこともあるのに勉強に付き合ってくれて、僕らは無事に合格することができた。

 今日はそんなハレの日、入学式。
 真新しい制服に袖を通せば、いよいよだと期待に胸が膨らむ。勉強についていけるかな、友だちできるかな。そんな不安もあるけれど、きっとなるようになる。

 中学の頃から隅田とは一緒に登校していたから、待ち合わせ場所は変わらない。お互いにまだ見慣れない制服姿にちょっとだけ照れくさくなった。

 柔らかな風の中、自転車を漕いでいく。ほんのちょっぴり、自分が大人になれたような気がした。

 下駄箱前に張り出されたクラス分け表。知らない人ばかりだったらどうしようと腹の奥がキリキリと痛む。隅田と手分けして自分たちの名前を探していると、興奮した隅田の声が飛んでくる。

 「(ゆう)、あったぞ!」
 「何組?」
 「三組! 一緒のクラスだった!」

 その言葉にほっと胸を撫で下ろす。よかった、これでひとまずぼっちは回避できた。同じ中学出身の人はあまりいないから、一気に不安が解消される。

 あとは入学式を終えれば今日は終わり。楽勝だ。
 ……なんて、このときまでは思っていた。