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スマホのアラームがけたたましい音を立てている。寝ぼけ眼でそれをストップさせるけれど、もう朝が来てしまったのだと憂鬱すぎて布団から出られない。はぁ……と大きなため息を朝から吐き出してみたところで、全くすっきりしない。
もぞもぞと動きながら仮病でも使うかと葛藤していたら、「侑ちゃん、起きないの?」と一階からお母さんの呼ぶ声が聞こえてくる。僕以外、いつも通りの世界が憎たらしい。自業自得のくせしてまた他責思考。何度目の自己嫌悪だろう。さっきよりも大きく息を吐き出したときだった。
「侑ちゃん、おはよう! 学校遅れるよ」
「おはよ……」
ノックもせずに、バーンとドアを開けて入ってきたのは長女の紗和姉だった。バッチリとメイクを済ませてオフィスカジュアルに身を包んだ紗和姉は、布団の中に閉じこもっている僕を見るや心配そうに眉を下げた。
「どうしたの、体調悪い?」
「ううん」
「そっか、でも気分は最悪なわけだ」
「よく分かるね……」
「そりゃあ、侑ちゃんのお姉ちゃんだからね。どうする? 学校休む?」
「…………行く」
「偉いぞ、侑ちゃん。お姉ちゃんが学校まで送ろっか?」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
明るい紗和姉と話していたら、少しだけ気分が上を向いてきた。観察日記の紛失を思い出すと胃がキリキリ痛むけど、僕の手元にないという事実は現実逃避をしたって変わらない。一度休んだら明日も休みたくなるだろうし、誰にも会わずにモヤモヤしたものをいつまでもずるずると引きずりたくない。こういうときこそ、隅田とバカみたいな話をして思いっきり笑いたい。
後ろ髪を引かれながらものそのそと布団から出て、学校に行く準備を始める。あーあ、遅刻は確定だ。時計の針は、いつも家を出る時間を示そうとしている。学校に行くと決めたのは僕だけど、授業の途中で教室に入らないといけないと思うと、やっぱり行くのやめようかなという気持ちが芽生えてきた。絶対注目されるもん、首席レベルの間宮くんにも入学早々に遅刻してきたやつだって白い目で見られちゃう。憂鬱だ、どうして困難ばかり待ち受けているのだろう。



