この学校では笑顔が絶えません

友人AとのLINE
野月「学校の紹介ありがとう!」
野月「直接お礼言えなくてごめん。ちょっと予定があって、早めに帰宅したんだ」
A「全然いいよ~。いい学校だったでしょ?」
野月「うん。マジ助かった!」
A「明日も来る?」
野月「そのつもり。学生さんに取材させてもらおうかなって思ってる」
野月「Aも明日いるよね? 先生サイドからも話聞きたいから、どっかで時間作れる?」
A「おけ~。明日はコマ数少ないし、職員室に来てもらえれば基本いると思う」
野月「りょ」
野月「そういえばさ、今日校庭で体育祭かなんかの練習してた?」
A「体育祭? 練習まだ始まってないけど」
A「なんかあったん?」
野月「いや、校庭でさ、生徒がみんなに囲まれてたんだよね」
野月「笑って!とか言われてたんだけど」
野月「あれってなに?w」
A「校則だから」
野月「(?のスタンプ)」
A「パンフちゃんと見た?」
A「笑顔は校則だから」
野月「(!のスタンプ)」
野月「あれマジなんww」
野月「ウケるw」
A「は?」
   ※しばらく返信なし
野月「え、なんか怒ってる?」
A「(既読スルー)」
野月「怒ってたらごめん」
A「(既読スルー)」

怒らせてしまったんだろうか。
既読スルーの画面を見て、しばらく私は悩んだ。
自分の働いている学校を茶化されたのが気に食わなかったのかもしれない。
けれど、学生時代のAならこのくらいでは怒らなかったはずだ。
とはいえ、取材させてもらっている立場で、こちらが不躾(ぶ しつけ)だったのは間違いない。
明日、誠心誠意謝ろうと決めてAとのトーク画面を閉じた。

そのまま、流れるようにSNSを開く。
SNSには作家名で登録している。
以前は日々の生活について投稿することが多かったが、
最近少しずつフォロワーが増えてきたこともあり、発言内容には気をつけるようにしている。
すると呟く内容がどんどんなくなっていき、しまいには新刊の告知しかできなくなってしまった。

これではいけない。
最近のSNSは呟かないとどんどんフォロワーのタイムラインから消されてしまうという。
作家仲間の勧めもあって、ここ最近は当たり障りのないことならなるべく呟くようにしていたのだ。
しかし、その当たり障りのないというのが難しい。
取材に行ったことくらいは呟いてもいいだろうか。
どこの学校かは伏せ、次回作に向けてとある場所の取材をしたということだけアップしておけば、
少なくともフォローしてくれている読者さんは〝次回作があるのだ〟と思ってくれるに違いない。

そう思って呟き内容を書こうとしたとき、DMに〝1〟とマークがついていることに気がついた。
めずらしい。めったにDMなんてこないのに。
なんの気なしに開いてみると、新規アカウントからのDMのようである。
まれに、DM経由で仕事の依頼が来ることがあるというし、念のため内容を確認しようと、該当のDMを開いた。

「うわ」

思わず声が出た。勢いでDMを閉じてしまう。

なんだ今のは。
モザイクがかかっていてよく見えなかったが、人と人が向き合って座り、
なにかしているような画像だった。

意味深に、一枚だけ送られてきたその画像に、当然ながら見覚えはない。
ものすごく、嫌なものを見せられたような気がする。気分が悪い。
もう一度確かめる気は起きなかった。まじまじと見たら後悔しそうだ。
DMを削除しようと指を動かし……考えなおした。
万が一、このDMがなにかしらの嫌がらせだったり、犯罪だったりした場合、消すのは悪手だ。
証拠を残しておく必要がある。
こんな気持ち悪い画像が自分の手元にあるなんてものすごく嫌だったが、しかたない。
削除してはいけないという意志の力をかき集めて、私はSNSを閉じた。