「この役立たず!!!もっと可愛く髪を結いなさいよ!!!」
自分の思い通りの髪型にならないからと癇癪を起こした妃都美は、髪を結った羽美の頬を思いっきり叩いた。羽美の右頬は赤く腫れ上がる。
羽美は慌てて謝るも、妃都美は容赦なく羽美を叱りつけた。
妃都美が怒り狂う理由があった。それはある一族が棚邑家に縁談を申し込んできたからだ。
その一族とは華族最上位の名家の一つ久世家の当社で帝都一最強の軍神と呼ばれる長男の珀乃からこの家の娘を嫁に迎えたいと。
棚邑家の娘は羽美と妃都美なのだが、両親達は妃都美一択だからと当然の如く羽美を除外していた。
既に帝都の結界を守る巫女に選ばれていた妃都美にとっては断らない理由がない縁談だ。
珀乃に気に入られたいからと高価な着物は勿論、妃都美が求めているものは全て取り揃えている程だった。
逆に羽美は今まで以上に叱責されることが多くなり、身も心もボロボロだった。
「異能も持たない、化け物を呼び寄せる声を持ってるアンタなんか珀乃様が嫁に迎えるわけないでしょ」
「なんでアンタなんか産んじゃったのかしら。妃都美だけで十分だったのに」
「妃都美が久世家に継いだらお前なんかこの家から追い出してやるからな」
羽美は家族からの冷たい言葉に耐えるしかなかった。
珀乃との顔合わせの日も妃都美の願いで羽美は蔵に閉じ込められることになった。見窄らしい無能な双子の姉の存在を珀乃に知られたくなかったからだ。
当然彼女への当たりも強くなる。少しでも気に入らないことがあると今まで以上に手を出す程だ。
妃都美が久世家に嫁いだらこの家を追い出されるか、侍女として迎えられ更に惨めな生活を送るかのどちらかしか羽美には残っていなかった。
無能で妖を呼び寄せる不気味な歌声を持つ自分を愛してくれる人なんていない。このまま消えてしまいたいとさえ思い始めた羽美に希望もない。
精霊達は必死に彼女を慰めるも今の羽美は通用しなかった。
「氷神の血を受け継ぐ軍神は真実の眼を持つ。必ず君を見つけて愛してくれるよ。あの夢の中の男の子を信じて」
精霊の口から出た予言のような言葉。あの不思議な夢も絡んでいるような口ぶり。
だが、羽美は信じられなかった。愛して欲しい人に裏切り続けられてきた羽美は信じるのを怖くなってしまったのだ。
「私も妃都美のような力が欲しかった。そうだったらお母様やお父様はきっと…」
愛してくれたに違いないと羽美は涙を流した。
そして、顔合わせの日の前夜に羽美は蔵の中に閉じ込められた。
両親や妃都美、数人の使用人達はこの屋敷の娘だというのに無能で不気味な存在である羽美の惨めな姿を嘲笑していた。
とても寒くて真っ暗な寂しいその場所で羽美はただ一人、蔵の小さな小窓から見える三日月を眺めた。
その明かりだけと精霊達だけが彼女を慰めるのだった。
深夜、小窓から優しい風が吹きつけた。
まるで孤独な羽美の頭を撫でるように吹きつけたその風と共に彼女への贈り物を運んできたのだ。
その贈り物とは、美しい雪の結晶の腕飾りだった。
眠る羽美の傍に置かれた腕飾りは月明かりに照らされてキラキラと美しく輝いていた。
暗い蔵の中を照らす腕飾りは彼女を守る様に輝きを保ち続けていた。
自分の思い通りの髪型にならないからと癇癪を起こした妃都美は、髪を結った羽美の頬を思いっきり叩いた。羽美の右頬は赤く腫れ上がる。
羽美は慌てて謝るも、妃都美は容赦なく羽美を叱りつけた。
妃都美が怒り狂う理由があった。それはある一族が棚邑家に縁談を申し込んできたからだ。
その一族とは華族最上位の名家の一つ久世家の当社で帝都一最強の軍神と呼ばれる長男の珀乃からこの家の娘を嫁に迎えたいと。
棚邑家の娘は羽美と妃都美なのだが、両親達は妃都美一択だからと当然の如く羽美を除外していた。
既に帝都の結界を守る巫女に選ばれていた妃都美にとっては断らない理由がない縁談だ。
珀乃に気に入られたいからと高価な着物は勿論、妃都美が求めているものは全て取り揃えている程だった。
逆に羽美は今まで以上に叱責されることが多くなり、身も心もボロボロだった。
「異能も持たない、化け物を呼び寄せる声を持ってるアンタなんか珀乃様が嫁に迎えるわけないでしょ」
「なんでアンタなんか産んじゃったのかしら。妃都美だけで十分だったのに」
「妃都美が久世家に継いだらお前なんかこの家から追い出してやるからな」
羽美は家族からの冷たい言葉に耐えるしかなかった。
珀乃との顔合わせの日も妃都美の願いで羽美は蔵に閉じ込められることになった。見窄らしい無能な双子の姉の存在を珀乃に知られたくなかったからだ。
当然彼女への当たりも強くなる。少しでも気に入らないことがあると今まで以上に手を出す程だ。
妃都美が久世家に嫁いだらこの家を追い出されるか、侍女として迎えられ更に惨めな生活を送るかのどちらかしか羽美には残っていなかった。
無能で妖を呼び寄せる不気味な歌声を持つ自分を愛してくれる人なんていない。このまま消えてしまいたいとさえ思い始めた羽美に希望もない。
精霊達は必死に彼女を慰めるも今の羽美は通用しなかった。
「氷神の血を受け継ぐ軍神は真実の眼を持つ。必ず君を見つけて愛してくれるよ。あの夢の中の男の子を信じて」
精霊の口から出た予言のような言葉。あの不思議な夢も絡んでいるような口ぶり。
だが、羽美は信じられなかった。愛して欲しい人に裏切り続けられてきた羽美は信じるのを怖くなってしまったのだ。
「私も妃都美のような力が欲しかった。そうだったらお母様やお父様はきっと…」
愛してくれたに違いないと羽美は涙を流した。
そして、顔合わせの日の前夜に羽美は蔵の中に閉じ込められた。
両親や妃都美、数人の使用人達はこの屋敷の娘だというのに無能で不気味な存在である羽美の惨めな姿を嘲笑していた。
とても寒くて真っ暗な寂しいその場所で羽美はただ一人、蔵の小さな小窓から見える三日月を眺めた。
その明かりだけと精霊達だけが彼女を慰めるのだった。
深夜、小窓から優しい風が吹きつけた。
まるで孤独な羽美の頭を撫でるように吹きつけたその風と共に彼女への贈り物を運んできたのだ。
その贈り物とは、美しい雪の結晶の腕飾りだった。
眠る羽美の傍に置かれた腕飾りは月明かりに照らされてキラキラと美しく輝いていた。
暗い蔵の中を照らす腕飾りは彼女を守る様に輝きを保ち続けていた。



