ルーズさが売りの俺が、生真面目クラスメイトに懐かれています

 悲喜こもごものクラス替え。俺の狙いは、女子の花形、青木さんの後ろだった。

 入学式で見た彼女の儚さと、弓道部に入ってからのすらりとした雰囲気の変化に圧倒された自分は、今日この日の楽しみをそこに定めていた。

「うわ」

 しかし、そう簡単にはいかないらしく、青木さんは別のクラスの先頭に名前が載っていた。俺は、三組の三人目。間にクラスがひとつ挟まってしまったから、合同授業でも会うことはないだろう。

 がっくりとうなだれていると、去年仲良くなった度会が声をかけてきた。

「え、どうしたんだよ。宇田」
「推しの阿部さん、一組……」
「あー、俺は一組だわ」
「はあ? 代われ」
「最後尾の度会の〝わ〟だけどいいのか?」
「……席替えあるんだから、ワンチャンあるだろ。来年までノーチャンなんだぞ」
「それはそうだけど」

 昨年クラスメイトだった、度会に軽口を言ったものの、これは決定事項なのだから変えようがない。萎えた気持ちのまま、並んでいる名前をよくよく確認してみると、見たくない名前がそこにあった。

「うえ」
「今度はなんだよ」
「最悪。五十嵐の後ろじゃん、俺」
「ええ……ああ。あの」
「だろー……はあ、俺席替えまでやってけるかな」
 
 ――五十嵐充。

 彼の男が、クソがつくほどルール大好き人間だと知ったのは、体育の合同授業のときだ。

 俺たち以上に雑に準備運動をしていた奴らに、先生以上の怒号で叱ったと思ったら、懇々と「なぜ準備運動をするのか」を説こうとして、二クラス分のドン引きをもらった男。

 しかも、扉スレスレの身長で、ラガーマンどころかプロレスでもしてるのかよって噂になったくらいだ。しかも頭がいいらしく、学年一ケタ台の成績もあるらしい。

 実際のところ、デキる奴のくせにそういうドン引き事件が都度あるらしく、この一年の間に「北口高校の五十嵐はヤベー」という噂はまたたく間に広まっていった。

「前途多難」
「賢いフリすんなよ。むしろ五十嵐に勉強教えてもらえばいいじゃん」
「ヤだよ、バカにされんのがオチだって」

 そんなことを言いながら、諦めて新しいクラスに向かった。
 あいうえお順に並んだ座席表。間違いなく、俺の前には五十嵐が座る事になっている。

 その後ろに、身長くらいしか近くない、モヤシな俺が座らなければならない。

 どうにかやりすごしたいと、俺は机に重ねられたプリントを颯爽と机の中に片付けて、机に額を当てたのだった。