覇王令嬢の野望 ~絶対平和主義の少女に転生した最強女帝の帝国再建譚~


 私がこのエルデン地方の実権を握り、ひと月が経った。
 その間、フロイエンの町は平和だったし、マルセルもノルベルトも上手くやっているようだった。
 私達も屋敷の生活にも慣れたし、新人メイド達も問題なく働いている。

「ヘルミーネ様は政務がありますのに毎日のようにお祈りをするとはさすがですね」

 今日も教会でお祈りをし、神父様と話をする。

「いえ、これは義務ですし、私には当たり前のことです」
「ご立派です。何でも働き口のない者に職を与えたとか。町で評判になっていますよ。さすがは聖女様ですね」

 マルセルとノルベルトが上手くやってくれたのだ。
 おかげでスラムもかなり人が減っている。
 後は鉱山での働き口を確保したらそれでスラムは一掃できるだろう。

「人には労働の義務があります。主もそうおっしゃっています」
「まことにその通りですね」

 神父様はニコニコ顔で頷く。

「お嬢様、そろそろ……」

 ディアナが囁いてきた。

「うむ……神父様、そろそろ政務に戻ります」

 政務という名のお茶と読書。

「ええ。頑張ってください」

 私達は教会を出ると、馬車に乗り込み、屋敷に戻る。

「ディアナ、町での評判はどうだ?」
「スラムのこともありますし、非常に良いですね。皆が聖女様と崇めています」

 もし、私だけだったらこいつらもいないし、マルセルもいないんだよな。
 そして、聖女とも呼ばれず、民衆から暴君とでも呼ばれてそうだ。

「そうか。まあ、悪くはないな」
「ええ……ん?」

 返事をしたディアナが外をじーっと見た

「どうした?」
「いえ、町の様子が少し……」

 そう言われたので窓から外を覗くと、確かに町の様子が少し、おかしい。
 皆が何かを話し合っている様子なのだ。

「何かあったか?」
「何だろうね? マルセルさんに聞いてみたらどうかな?」

 それもそうだな。

「ディアナ、帰ったらマルセルを呼べ」
「承知いたしました」

 そのまま進んでいき、丘を登り終えると、馬車が止まる。
 そして、馬車から降りたのだが、屋敷の前にマルセルの姿が見えた。

「ヘルミーネ様」

 マルセルが声をかけてくる。

「どうした?」
「実は町で、ある噂が立っております」

 噂……

「何だ? 帰りに町の様子が変だったからお前に聞こうと思っていたのだが……」

 ディアナに呼ぶように命じたが、それより前に来ていた。
 かなりの噂だな。

「実は陛下が亡くなったとか……」

 ほう?

「真偽は?」
「まだ不明です。ですが、複数の行商人からの情報らしいです」

 ふーむ……

「ディアナ、水見式を確認してこい」
「はっ!」

 ディアナが急いで屋敷に入っていった。

「マルセル、どう思う?」
「十分にあり得るかと……高齢ですし、病死もあり得ます。もしくは、レナード公爵かフェリックスが動いたことも考えられます」

 ふむ……

「お嬢様! 水見式には何もありません!」

 ディアナが玄関から教えてくれる。

「そうか……」

 こうなると、水見式からの情報も信用できんからまあいいが……

「ヘルミーネ様、密偵を出し、帝都を探らせては? もしくは、イェルクの領地でも良いと思います。イェルクは皇帝の子。何らかの情報を掴んでいてもおかしくないです」

 確かにな。

「よし。ノルベルトを……ん?」

 ノルベルトを呼ぶように言おうと思ったのだが、そのノルベルトが馬に乗ってこちらに来ている。

「ヘルミーネ様!」

 ノルベルトは下馬し、私の前で跪いた。

「何だ?」
「例の部隊が森で訓練中に怪しい馬車を見つけたとのことです。それで軍を出したら幼い子を連れたウルスラと申す女がヘルミーネ様に会いたいと面会を申し出ています」

 ウルスラだと?

「私が知っているウルスラは皇帝の娘だぞ」

 晩餐会で私の隣に座っていた10代くらい女だ。

「長い金髪の女性です」

 合ってる……

「書斎におるから連れてまいれ。帝都の従姉かもしれん」
「はっ!」

 ノルベルトは馬に乗り、丘を降りていった。

「マルセル、来い。情報が入るかもしれぬ。ディアナはユルゲンを連れてこい」
「「はっ!」」

 私達は屋敷に入ると、すぐに2階の書斎に向かった。
 そして、席につくと、右後ろにディアナ、入口近くにユルゲン、部屋の右にマルセルが控える。

「ミーネ、あのウルスラだったらどうする?」
「まずは話を聞くことかな?」

 ふむ……対話か。

「わかった。わざわざここに来たということは何かの話があるのだろうな。聞いてみよう」

 とりあえずは話を聞いてみることにし、この場で待つ。
 すると、30分ぐらいでノックの音が部屋に響いた。

『ヘルミーネ様、ウルスラ様とヴィリー様をお連れしました』

 ヴィリー?
 それも皇帝の子だ。
 確か7歳の幼い子……

「入れ」

 そう告げると、ノルベルトと共に金髪の若い女と同じく金髪の幼い子が部屋に入ってきた。
 女は黒いドレスを着ており。幼い子はそんな女のスカートを握り、不安そうな顔をしていた。
 そして、間違いなく、晩餐会で会ったウルスラとヴィリーだ。

「久しいな、ウルスラ、それにヴィリー」

 そう言うと、ウルスラの眉が上がり、ヴィリーはビクッとして、ウルスラの背に隠れた。

「ええ。久しぶりね、聖女様」

 ウルスラは嫌味たっぷりだ。

「聖女ではなく、狂人だよ」
「そうであって欲しいわ」

 ほう?

「では、そんな狂人のもとに帝都で優雅に暮らす皇女が何しに参った? それも幼い皇子まで連れてきて」
「父が……陛下が亡くなったわ」

 ほーう?



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いつもお読み頂き、ありがとうございます。
来週の3/27(金)に本作の第1巻が発売となります。
web版を読んでいる方も楽しめるように改稿、加筆も行いましたので読んで頂けると幸いです。
ぜひとも手に取って読んでいただければと思います。

https://x.gd/IcBv1t

よろしくお願いします!