「さて、ミーネ。ようやく帝都から脱出し、安心できるところまで逃げられたぞ」
「うん。ありがとうね」
たいしたことないと言いたいが、さすがに疲れたな。
「よい。私はお前だ。それでユルゲンも言っていたが、これからどうする?」
「私達ってこの町の領主なんだよね?」
「名ばかりだがな」
今は……
「もし、ノーレだけだったらどうするの?」
「ホラーツが兵を外した瞬間に斬っておるな」
「え? なんで?」
「理由は適当な罪を考える。まあ、不敬があったとかだな」
理由なんて後付けでいくらでも考えられる。
「いや、そうじゃなくて、ノーレはなんでホラーツさんを斬るの?」
「邪魔だからだ。あやつがおる限り、私は名ばかり領主。実権を奪わねばならぬ」
そうしないと何もできない。
「野望のため?」
「まあ、そうだな。後は身を守るためだ。あやつが味方かどうかわからぬし、もし、あやつが私に害をなそうと思えば簡単に殺せる。それでは帝都から逃げた意味がなかろう?」
ホラーツは1000の兵力を持っているのだ。
そして、私を殺す理由も後付けでいくらでも考えられる、と。
「いきなりホラーツさんを殺すのはちょっと……」
「わかっておる。だから何もしなかったのだ。それでお前はどうしたいんだ?」
肝心なのはミーネの意思だ。
「このまま暮らしていくのはダメなの?」
「良いぞ。好きにせい。まだこの町のこともホラーツのこともわかっていない。北のザームエルもまだ帝都におるだろうから動けん。様子見で良いんじゃないか?」
別に悪いことではない。
「うーん……じゃあ、それで」
「うむ」
私達は休むことにし、雑談をしながら過ごしていった。
夕方になると、ディアナが呼びに来たので一緒に1階に下り、食堂に行く。
食堂は長方形に長い部屋であり、白い布が敷かれた長テーブルが置いてあった。
そして、ユルゲンがテーブルの上には豪華な食事を並べているところだ。
「お嬢様、どうぞお座りください」
「ああ」
ユルゲンに勧められたので上座の正面席に座る。
すると、ユルゲンとディアナも左右の席に座った。
なお、ミーネは私の横で浮きながら料理を眺めている。
「お嬢様、久しぶりのまともな料理です。これまで苦労をかけてしまい、申し訳ございませんでした」
ディアナが頭を下げる。
「よい。我々は無事に帝都を脱出し、追手を撃退した。そして、ようやく長い旅を終えて、ここまで来ることができた。これも主の加護のおかげである」
「はい。すべてはお嬢様のおかげです」
「お嬢様は主に選ばれたのです」
まあ、わかっていたことだが、こいつらって主への信仰が薄いんだよな。
「そうだな。これまでの旅のねぎらいと明日からの希望を願い、乾杯しよう」
「はい」
「あ、ぶどうジュースですので」
私達はグラスを持って掲げた。
「乾杯」
「かんぱーい」
「「乾杯」」
私達はグラスに入っているぶどうジュースを飲む。
甘みが素晴らしく、濃厚だ。
「おー、すごいね。こんなすごいジュースは飲んだことがない」
ミーネも美味いらしい。
「この地はぶどうも採れるのか?」
「ええ。そうらしいですよ。ワインの名産地のようです」
へー……
「ああ、すまん。せっかくの料理だ。食べようではないか」
2人が料理に手を付ける様子がないので先に食べる。
すると、2人も食べだした。
「美味しいね!」
「うん、美味い」
温かい料理を落ち着ける場所で食べる。
これぞ人間の生活だ。
「ええ。本当に美味しいですね」
「10日ぶりですが、だいぶ前のように感じます」
まったくだ。
私達はどんどんと食べていき、久しぶりのまともな料理を堪能した。
そして、食後はディアナに連れ添われ、風呂に向かい、湯船に入る。
「あー……」
「ええのー……」
温かい湯に浸かると、ミーネと共に声が出た。
『お嬢様、お湯加減はいかがですか?』
外で待機しているディアナが聞いてくる。
「良いぞ。お前らも後で堪能しろ。濡れタオルの比じゃないくらいに気持ちが良い」
溶けそうな気になる。
『そうさせていただきます』
私達は風呂も堪能すると、ディアナに身体を拭いてもらい、寝巻きに着替える。
そして、2階の寝室に入ると、ベッドにダイブした。
「ふかふかー」
「本当にのう……ディアナ、私はもう寝る。お前達もさっさと風呂に入り、休め。布団がすごいぞ」
ついてきたディアナに告げる。
「かしこまりました。それではおやすみなさいませ」
「ああ」
ディアナが出ていくと、灯りを消し、ミーネと一緒に久しぶりの布団に感動しながら就寝した。
翌日、目が覚め、時計を見ると、すでに9時を回っていた。
「ふわーあ。おはよー……」
ミーネも起きてきた。
「おはよう。やはり布団だな」
「本当だよね。主に感謝だよ」
あと、布団を発明した人な。
「しかし、ディアナとユルゲンはどうした?」
起こしにも来ないぞ。
「寝てるんじゃない?」
あり得るな。
あの2人には苦労をかけたし。
「二度寝でもするか」
「さんせー」
私達は再度、布団に入ると、ぬくぬくを感じながら再び、目を閉じた。

