僕の知る君は、嘘つきで死にたがり

じゃあ、他に何を書く?
何も浮かばない。
スマホを置いて、また手に取る。

投稿を開いては閉じ、プロフィールを覗いては戻る。

名前も写真も、よくあるものだ。

特別な情報は何ひとつないのに、目だけがそこから一切離れなかった。

俺は結局、何も書かないまま、時間だけを消費した。

何かをしなければ、と思いながら、何もしない選択を重ねる。

そのくせ、見ないという選択肢だけは取れなかった。

画面の明るさが目に染みて、充電の残量が減っていく。

部屋は静かで、時計の音だけがやけに大きく感じる。
外では、たぶん誰かがまだ起きていて誰かがもう眠っている。

その境目の時間に、俺はひとりで立ち尽くしていた。

彼女は、その後も何も書かなかった。
投稿は消えず、追加もされない。

それが余計に、落ち着かなかった。
考えすぎだ、と何度も自分に言い聞かせた。


SNSなんて、そういう場所だ。
深夜には、誰でも少し大げさになる。
それでも、胸の奥の揺れは消えなかった。

俺は何度も時計を見て、何度も画面を更新して、何度もため息をついた。
気づいたとき、窓の外がわずかに白んでいた。

夜が、終わっていた。
何もしていないのに、ひどく疲れていた。

話しかけてもいないし、救ってもいないし、何ひとつ変えていない。

それなのに、確かに俺はあの一言に捕まっていた。
朝が来た、という事実が、そこに残るのだった。


次の日の朝。
カーテン越しの光が、思ったより早く部屋に入り込んできた。
眠ったはずなのに、体の奥に夜が残っている。
頭が重く、夢を見ていたのかどうかも思い出せない。
颯馬は、起き上がる前からスマホを手に取っていた。
習慣、というほど自然な動きだった。