自由奔放ストラングル ー自分を好いてる者たちに、始末対象がいるんだがー

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(今日から、寮生活が始まるのかぁ)
 目隠しをされて視界が暗い中、天音はガタガタ揺れる車内で思いをはせていた。
 組織の本部を隠すためだけれど、もう場所は把握済みならしい。
 でも、ぶっちゃけて本心で言うとーー。

(あーめんどくさいったらありゃしない。博士号取ってる私が、なんで中学行くんだか。こんなん遊びにさえならん)

 精神年齢が18才以上だと診断されたのに、本人でも引くほど子供っぽい。
 これが、神の生徒(ゴッド・スチューデント)・下町天音の内面である。

(3.141592653589793238462643……)
(10年間地元警察が、誰1人組織の人間を捕まえられなかったというのに、きっと幹部レベルにスキルが高いスパイを探せと女子中学生に言うのか。他人に押し付けるんじゃなくて、無謀な作戦を考えたボスがやれよ)
(あ、無線機の予備を3つぐらい忘れたかも)
(液体の表面張力はどこでも発生する理由は、重力の反作用が原因だと考える。その説明文を教師用教科書とかに載せられたら、賞金何円貰えるかなぁ)
(刺客が車に飛びついて来たら、目隠しをぶっちぎって……)
(東日本と西日本がそれぞれ独立したのは……東日本は文明を栄えさせたいのに、西日本は自然と共生することを目的としていたからだと推測できそう……)

 ちなみにこれら全て、同時に考えているというのだから大したものだ。

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「ついたぞ」

 ちょうどこの学校での生存戦略(無双プラン)を組み立て終わったところで、車のドアが開けられ目隠しを外された。
 しかし天音には、まず行くべきところがあった。
 50mを4.5で走る足を駆使して急いだところはーー

「……おえ」

 お手洗いだった。
 実のところ、天音は乗り物酔いがひどい。
 車はもちろん、飛行機、バス、電車、バイク、さらには自転車までも酔ってしまうのだ。

(普通に歩いて行きたい……)

 そう思うのも、無理のないことである。
 ちなみにさっきまで天音の思考を追えたのは、酔って思考スピードが1000分の1まで下がっていたからだった。
 そのまま1時間ほど個室にこもって、胃の内容物を出していたのは言うまでもない。
 物語が進まない内に、神の生徒の説明をしておこう。

 神の生徒(ゴッド・スチューデント)とは、ギフデットを超越する天才のこと。
 脳の回転率・身体能力が尋常ではない、世界の理を崩す者(バグ)である。
 だいたい何でもできるが、変わった欠点を持っていることが多い。
 普通の知能がLv.1だとすると、ギフテッドはLv.1.5、天音はLv.4にあたる。
 大脳・小脳4つ分の知能・技能を有しているのだ。
 神の生徒は世界に10人ほど存在し、Lv.3〜5がほとんどである。
 ごく稀に思考スピードを制御できる者もいるが、基本的には脳内を高速回転したまま生活することになるだろう。
 しかし神の生徒は、あくまでも世界のバグのような存在。
 迷惑(使えねぇ)スキルを持って生まれてくることが、75%の確率であったりする。
 空中に浮上できるけど降りられないだとか、軽い衝撃でも骨が液状化するだとか、無い方が無難(マシ)な能力。
 ちなみに天音は、たまに未来の出来事に体のみが対応できるというスキルを持つ。
 脊髄反射でその時になったら動くが、天音はその未来が全くわからない。
 あと、脊髄が思考するという規格外なことをやってのけているため、小学校低学年ほどの思考での対応しかできない。
 そのため頭脳戦でスキルが発動すると、不可解(バカ)なことをやり出してしまうのだ。
 スキルではない可能性もあるけれど、たぶんこれだろう。
 違うスキルがありました〜、とかなるとたまったもんじゃない。
 もしかしたら、この学園でも神の生徒(ゴッド・スチューデント)と出会うかもしれない……?
 とりあえず天音、ファイト。

(脳内うるせぇ)

 ひどい! これが反抗期なのか……。
 天音はようやく落ち着き、まだ青い顔を個室のドアから覗かせたのだった。
 しかし笑っていられるのは、きっとここまでだろう。