御伽草子はノンフィクション

 亀型ロボットは浜辺でガキどもに見つかってしまいました。いくら精巧に作っても偽ものの亀なので、ガキどもは不審に思って棒で小突きまわしました。
 そこに、現われたのが漁師の太郎です。
 太郎は、亀を助けようとした際に服が甲羅にひっかかてしまいました。
 その時、自動回収装置が作動して、そのまま亀ロボットと共に海の底にドボンと突入してしまいました。当然、太郎は溺れて心配停止になりました。
 海の底の船で亀と太郎をキャッチしたわしは何とか蘇生させようとしました。 
 何万年光年先に浮かぶ宇宙ステーションの医務室に連れて行きました。
 地球にいる生き物を勝手に殺傷したら重罪になります。
 事故とはいえども、わしらの亀ロボットのせいで溺れたのだから何としても救う義務があります。
 脳にどんなダメージが残るか分かりません、ステーションのオト博士が蘇生の処置を施しました。
 しばらく、太郎はリハビリも兼ねて宇宙船の中で過ごしました。
 ピカピカの宇宙ステーションは太郎にとってはお城のように見えたに違いありません。
 わしの星の人間はとんでもない美形なのです。男の顔もオナゴみたいに見えます。
 あいつは、調子に乗ってクルーや博士の乳や尻を触っておりました。
 わしらの星では、そういう濃厚なスキンシップはありませんから、初心なオト博士はビックリたまげながらも愛想笑いを浮かべていました。
 地球での地上勤務が長いわしは、女郎相手に性行為も体験してますが、宇宙船の人達はみんな処女と童貞です。
 太郎のセクハラに怒る事なく、こんなにも元気になって良かったと言って安堵していたのです。
 太郎の体調が回復したので、わしは太郎と共に地球へと帰還しました。
 よっぽど、ステーションでの生活が楽しかったのでしょうね。故郷についてからも、あいつは思い返してニヤニヤしてました。
 普通は、我々と接した記憶をきちんと消します。
 けれど、脳にダメーシを受けて脆弱になっている太郎の場合はダメージを与える事になりかねません。
 そやから、特例としてステーションでの記憶を消さずに帰してやったのです。
 太郎は自分の親や親戚がみんな死んでいる事に気付くのです。もちろん、太郎は落ち込みましたが、あの時代は人が死ぬなんてよくある事です。
 太郎は、さほど落ち込んでいませんでした。あいつは体験した事をぺらぺらとみんなに喋っていました。あいつには漁師として生きる若さや気力が漲っていました。
 ふと、太郎はオト博士かせもらった小さな小箱の存在を思い出したのです。
 日本昔話には玉手箱というふうに書いてありますが、あれは、今の日本の言葉で言うと化粧ポーチの役割を果たす箱なんです。
 オト博士は小さな口紅ぐらいの大きさのものを渡していました。別れ際、美人博士のオトが別れ際に太郎に言いました。
『いいですね。決して、この箱を開けてはいけませんよ』
 開けたら、太郎が死ぬようなしかけを施しておりました。
 なんで、そんな事をしたかと言うと、高度な蘇生手術をしても脳に記憶障害か起きることは分かっていたからです。オト博士の言葉が記憶できないような重篤な障害が残っているようならば箱を開けてしまうに違いありません。
 記憶を失う女性が主人公のお涙ちょうだいの恋愛映画が、昔、ありましたね。