御伽草子はノンフィクション

「みなさんは、わたしのことを誤解していますわ。求婚者達に無理難題を言ったり、金銀財宝を要求したのは、わたしの事を嫌いになってくれると期待したからなんです。わたしには好きな人がいました。竹林の近くで暮らす若者を愛していました。彼は、竹細工や炭などを売って生計を立てていました。時には、猪の皮や肉を売ることもあります。わたしは彼と結婚したかったけれど、生憎、彼には妻がいました。みなさんは、わたしのことを金持ちの男を振り回して死なせた悪女だと言っていますが、本当に、わたしが悪女であるなら愛する彼の妻を殺していたはずです。わたしは、勝手に求婚してくる金持ちの男達を恨めしく思っております。本当にうんざりしていたのです。彼等は、わたしの気持ちなどお構いなしなんだもの。金さえあれば、わたしがなびくと思っている哀れな人達です。あの人のことが今も好きです。わたしか木に登って降りられなくなったら、微笑みながら助けてくれました。この想いを消す事は出来ません。そんな自分に区切りをつけたいと思って遠いところに行く事にしたのです。でも、わたしは海難事故で溺れ死にました。それでも未練たっぷりなのです。わたしは愛の難破船。死んでからも、あの人に会いたくてたまらない。わたしが愛したのは彼一人だけ。そのことをみなさまに知っていただけて何よりです」


     ☆

 事情通Xの証言

 いやぁ、人間っちゅうのはアホな生き物ですなぁ。
 霊媒師のクソばばぁが好き勝手な証言をしていますが、あれは真っ赤な嘘でっせ。
 わしは単身赴任中の宇宙人Xと申します。
 日本に派遣されてから、かれこれ二千年ほどになります。
 ずっと日本に滞在している訳ではありません。
 定期的に宇宙ステーションと地球の間を行ったり来たりしています。
 ワープすると、地球に戻った歳に百年ぐらいの歳月が一気に進んでいます
 さてさて、ここだけの話、『がぐや姫』と呼ばれているオナゴは高性能の女型のロボットなのです。
 日本人の暮らしを記録する為に、わしら惑星Ωの研究チームが平安時代の過疎の村に設置したのです。 
 大昔から、わしら宇宙人は地球の生き物に害を与えたり干渉しないようにして緻密に観察していました。
 あの時は、カグヤ5、つまり女型ロボットの五号機に求婚する貴族が出てきて困りました。平安時代の日本の山里の衣食住や親子関係を観察する為に送り込まれたカグヤ5は飯を食べますが、消化せずにそのまま厠に捨てるようになっています。
 白い肌の質感も体温もバッチリです。
 当時の日本人の平均的な顔をモデルに作ったのですが、実は、人の顔を平均すると美人になるのです。
 ロボットですから子宮なんてありません。殿方との性行為なんて無理です。のらりくらりと求婚を交わしましたんや。カグヤ5の会話は人工知能によるものです。
 令和の若いお嬢さんに分かるように言うと、ペッパー君みたいな感じです。
 コミュ力に難があるので色々と受け応えがトンチンカンになります。
 でも、そういうのに平安貴族の殿方は萌えるんですなぁ。
 わしは何かあったらフォローする技術屋として派遣されておりました。軍隊の特殊部隊の工作員みたいな感じです。