王子の俺よりも、さらにイケメンな転校生がやってきました

現代は地球温暖化で騒がれている。
だからきっと、今年のクリスマスも雪が降ることはないだろう。
(くっ一度でいいから…ホワイトクリスマスを体験してみたいっ……)
それは俺の小さな頃からの小さな願いだった。ホワイトクリスマスを知ってから、毎年雪が降りますようにとサンタクロースに祈っていた。
(……なのにっ雪が降らない…)
俺が心の中で涙を流していると、顔の前に影が現れる。
「累…どしたん…?」
そう聞いてきたのは、学校一イケメンと言われている七瀬怜。通称キング。
(くっっっっっそ!こいつに勝てないのは許せねぇ……)
俺が心の中で自分の意志を燃やしていると、七瀬が
「今日、ファミレスね」
と言って去っていった。今日こそ、俺はいろいろな人にかっこいいと思ってもらう!
「頑張るぞぉぉ!」
俺は廊下でそう言った。すると周りの人たちが「何を笑」と言ってきたが、俺は気にしなかった。

俺は昼休み、図書室に来ていた。すると、
「ん〜っ」
本棚に必死に手を伸ばしている女子がいた。俺はすかさず助けに入る。その女子の後ろに立って、
「これ?」
と声をかける。すると、その女の子は顔を真っ赤にして
「はい…」
と言った。俺は、笑顔で
「どうぞ」
と言う。すると、女の子は笑顔で会釈していった。俺はその瞬間、口元がニヤつく。
(よっしゃ!絶対にかっこいいと思ってもらえただろ!!!)
俺は心の中でそう叫ぶ。それと同時に、優しくして良かったという気持ちにもなる。相手はきっと嬉しい気持ちになっているだろう。
「ふぅ……」
俺は放課後、七瀬とノートを交換するのが、なんだか不思議な気持ちになった。

「なぁノート交換やめない?」
俺はそう言った。というのも、先ほどの図書室での出来事で少し思ったのだ。かっこいいと思ってもらうために人助けをするのではなく、その人に喜んで欲しいから人助けをするのだと。
(やっぱかっこいいと思ってもらうために人助けを率先してやるのはちょっとおかしいよな…)
俺がそう七瀬に話すと、七瀬は
「え、やだ」
と言った。俺は少し腹が立った。普通の人ならこの話の流れで「やめようか」と言うだろうに。それなのに七瀬は断固として譲らないのだ。
「俺、理由も話したよね?!」
俺がそう言うと、七瀬はむすっとそっぽを向いてしまった。
(前喧嘩したときは、明らかに俺が悪かったけど…今回は……)
七瀬がむすっとするので、俺もむすっとする。そして、俺はノートを机に叩きつけて、
「これ、ファミレス代。じゃ、帰るわ」
と言う。すると、七瀬は何かを言いかけた顔をしていたが、俺は無視する。結局、七瀬だって自分のことをかっこいいと思ってもらいたいだけなのだ。

「一条さ、七瀬と喧嘩したの?」
そう言ってきたのは、クラスの学級委員の一ノ瀬真希だ。表情はとても心配している。
「んーまぁちょっと……」
俺が言葉を濁していると、一ノ瀬は残念そうな表情をして、
「そこ二人仲良いからクリスマスも一緒に過ごすかなーって思ってたんだけど…」
一ノ瀬にそう言われて俺はクリスマスの存在を思い出した。しかし、今は到底、あいつとクリスマスを祝える気分ではない。
(クリスマスまであと一週間…!)
俺は心の中でウキウキする。俺はそこで一つのことを思い出した。
(そう言えば母さんにプレゼント買うつもりだったんだ…!)
俺はそう思い、一ノ瀬にずいっと詰め寄る。
「今度の休日、出かけられない?」
俺がそう聞くと、一ノ瀬は顔を少し赤くした。そして、笑顔で
「いいけど…でも突然どうしたの?」
と聞いてきた。俺はそれに対して、クリスマスにプレゼントを母に渡したいのだと話した。すると、一ノ瀬は手で胸を叩いて
「任せなさい!」
と言った。

一方、累と喧嘩した七瀬は……
図書室に入ると、累がいた。俺はこの間のことを謝ろうと、近づく。しかし、学級委員の一ノ瀬真希と仲良さそうに話している累に胸が締め付けられる。なんだか休日に会う約束をしているらしい。
「いくらっ…俺が悪かったからって…女子と遊びに行くなんて……」
俺はそこまで呟いて深呼吸する。
(累と遊びに行くのは俺なのに…)
俺はそう思った。しかし、思うと同時に恥ずかしさが込み上げてくる。累はちょっかい出して遊んでる程度の仲だと思っていたが、俺の中ではもっともっと大きな存在になっていたらしい。
「くそっ…」
俺は一人で胸の中の痛みに耐えていた。

そして休日の時がやってきた。クリスマスまであと三日。
「一ノ瀬〜!」
俺が一ノ瀬のところまで走る。すると、一ノ瀬は少し会釈して
「おはよう」
と言った。ほんの少し笑っているのがかわいいなと思った。そして、一ノ瀬の服をよく見ると、有名なブランドものだった。
「この服…」
俺がそう呟くと、一ノ瀬はニコニコの笑顔になって、
「そう!あの有名ブランドの服!パパが買ってくれたの〜!」
と言った。俺は心の中で(さすが金持ち……)と思っていた。よく考えたら一ノ瀬は顔もそこそこ良くて、頭も良くて財力もある。極めて優秀な生徒ではないだろうか。
(一ノ瀬ってすげーな……)
俺はなんとも言えない気持ちになった。
「さっそく本題に入るけど…どんなものを渡したいの?」
そう聞かれて俺は、「どんなもの?」と聞き返す。一ノ瀬は、
「例えば、普段使いしやすいものとか、かわいいものとか。ジャンル的な感じ」
そう言われて俺はうーんと考える。母にプレゼントするなら普段使いしやすいものが一番いいだろう。
「普段使いしやすいもので」
俺がそう言うと、一ノ瀬は「おっけー」と言った。そして、案内されたのは駅の近くのおしゃれな雑貨屋さんだった。
「ここに何かいいものがるんじゃないかな?」
そう言われて俺は店内をぐるりと見渡す。女性好みの雑貨がたくさんある。
「一ノ瀬だったら何が嬉しいかな?」
俺がそう聞くと、一ノ瀬は少し考える素振りを見せて、
「普段使いできるものでしょ……」
と呟いた。店内をぐるりと見渡して、一ノ瀬は
「マグカップとかポーチとかそのへんかなぁ……」
と言った。俺はマグカップコーナーとポーチコーナーを見に行く。結構、おしゃれなものが多い。
「俺…マグカップにしようかな…」
俺はマグカップを手に取る。布団に潜っている猫が描かれているマグカップだ。
「いいんじゃない?それ、かわいいし」
一ノ瀬が横から見て言ってきた。母さんもきっと気に入ってくれるだろう。
俺は値札をチラリと見る。値段もまあまあで悪くないだろう。
「じゃあ、レジ行ってくるわ」
俺はレジまでスタスタと歩く。店員さんに何回かチラチラと見られた気がしたが、俺は気にしない。
「2000円です」
そう言われて俺はお札を取り出す。すると、店員さんは頬を染めながらそれを受け取った。俺は品物を受け取る。そして、一ノ瀬のところに戻る。
「さ、店でよ〜」
一ノ瀬にそう言われて俺は店を出る。すると、七瀬がいた。
「な…んで……七瀬が……」
すると、一ノ瀬が笑顔でこちらを見てきた。
「ごめん⭐︎仲直りして欲しくて呼んじゃった!じゃあ、邪魔者の私は去ります!またねっ!!」
一ノ瀬は全力猛ダッシュで去っていった。
取り残された七瀬と俺は気まずい空気になる。俺は七瀬の目を見ないように頑張る。
「ねぇ…なんでこっち見ないの?」
俺は七瀬にそう聞かれているが、目を見ない。
「ねぇ、なんで一ノ瀬と雑貨屋さんに来てんの?」
俺はその質問も無視する。すると、七瀬は、
「じゃあ、一ノ瀬と付き合ってんのかな?」
そう言われて俺は七瀬の方を向く。すると、七瀬はニッと笑った。
「やっとこっち向いた」
そう言われて俺は怒った表情をする。七瀬はそれでも笑ったままだった。そして、
「ごめん。喧嘩したあと、よく考えたんだけどやっぱ日記はやめよう。累と関われる機会が減ると思ったけど、そうでもなさそうだしね」
そう言われて、俺は七瀬がなぜ反対したのか理解した。七瀬はただ単に寂しかっただけなのだ。
(確かに…やめたらあまり関わらないかも…)
俺はそう思った。そして、
「日記は続けない?内容だけ変えて」
俺がそう言うと、七瀬は顔を明るくした。輝いている。
「本当にいいの?!」
七瀬にそう聞かれて俺は頷く。そうして俺たちは仲直りしたのだ。
すると、七瀬がカバンをゴソゴソし始めた。俺はなんだろうと思って覗く。すると、七瀬は俺に紙袋を渡してきた。
「ほい。クリプレ…」
七瀬は少し恥ずかしがりながらそう言った。俺は受け取る。そして、中を開けると、おしゃれなシルバーアクセサリーが入っていた。
「うわぁ…ありがとう…」
俺がそう言うと、七瀬はまた笑顔を見せた。
「お返しは…」
俺がそう言うと、七瀬はひょいっと近づいてきた。耳に口を近づけてくる。
「プリクラ撮りたいな」
七瀬にそう言われて俺の耳は熱っぽくなる。俺は仕方なく了承する。そして、近くのゲーセンにあるプリクラに行った。
「ほら、並んで」
七瀬に肩を引かれて俺は並ぶ。
「3、2、1、かわいい〜!」
プリクラの写真を撮る合図が響く。俺はできるだけの笑顔を作る。
「お、写真出てきた」
七瀬はそう言って写真を撮る。頑張って笑っている俺とかっこいい笑顔の七瀬が映っている。
「累、ありがとな」
七瀬は俺にそう言った。

外は綺麗な夕焼けが広がっていた。
「累!早く帰ろう!」
夕焼けを背景にそう言う七瀬の姿が一瞬、霞んで見えた。
(ん……?)
俺は違和感を覚えつつも七瀬に
「今行くから!」
と言う。七瀬は笑顔で近づいてくる。その笑顔がまた、眩しい。
「綺麗な夕焼けだな…」
そう呟いた七瀬の背中がまた霞んで見える。そのとき、俺は七瀬がどこかに消えていってしまうような感覚に襲われた。

今年のクリスマスは見事に雪が降りました⭐︎