さあ、卒業式の季節になった。
桜の蕾が少しずつ膨らんでくる頃、俺たちは……
明日の卒業式の準備で大忙しだ。
「そっち椅子足りる〜?」
俺はこの場にある椅子を数える。156席。あと4席だ。
「四つ足りない!」
俺がそう言うと、椅子を出している人がokサインを出した。そして、椅子を運んでいる人たちが出てくる。これでピッタリだ。
「終わったー!」俺がそう言うと、みんながわらわらと群がってくる。
(え…何…?)
俺が少し警戒していると、みんなが俺の肩を掴んでこう言った。
「一条、卒業式の在校生総代だろ?」
「頑張ってー!!!」
「カメラ構えてるから」
と口々に応援の言葉を言ってくれた。
「ありがとう…!」
俺がそう言うと、みんなはニッと笑った。そう、俺は在校生総代の役割を果たさなければならない。俺だって本当はやりたくなかったんだが……
『一条くん!君なら在校生総代いけるよ?!』
担任がそう言った。俺は笑顔で
『すみません…無理っす』
と言う。すると、先生がショックを受けたような表情をして、『じゃあ、校長先生と直接話すしかないな』と言い始めた。
(校長先生?!俺あの人苦手なんだけど……)
これ以上、抵抗すると面倒くさそうなので、俺はしぶしぶその役割を了承した。
『ありがとう、一条くん!じゃあ、明後日までに原稿提出よろしく!!』
先生はそう言って走り去っていった。俺は教室に残された。
「累、総代やるんでしょ?みんなワクワクしてるよ〜」
七瀬が横から来てそう言った。俺はしかめっ面をする。
「やりたくてやるわけじゃないけどな」
俺がそう言うと、七瀬はくすくすと笑う。俺は七瀬を見る。
(絶対こいつが総代の方がいいってぇ〜!!)
「俺の方が総代がいいとか思ってる?」
七瀬がケラケラ笑いながらそう言った。俺は心の中で思っていることを当てられ、動きが固まる。
「お、思ってない!」
俺がそう言うと、七瀬はまた笑った。
「おーい!放課後準備ありがとなー!先生から奢りのアイスだー!!」
体育館の入り口で先生がそう言った。すると、体育館準備の人たちが一斉に先生の方に走る。俺は遅れてしまうとダッシュする構えをした。すると、担任の先生が横から袋を持って歩いてきた。
「総代の君にはこっち」
と言って渡してきた。中にはお菓子やアイス……。
他の子よりも圧倒的に多い数のものを貰ってしまった。
「ありがとうございます」
俺がそう言うと、先生は俺の肩をポンと叩いて、
「総代頑張れよ」
と言った。俺はお辞儀をする。すると、横から七瀬が顔を近づけてきた。
「アイス二つあんじゃん。一個ちょーだい?」
そう言われて、俺は「仕方ねーな」と言って一つ渡す。アイスの袋を開けて一口齧る。冷たい空気が口の中に広がる。体がどんどん冷やされるのが分かる。
「うまー」
七瀬がそう言って俺も頷く。アイスの季節じゃないけど、こう言うときに食べるアイスは格別だ。
美味しくてあっという間に平らげてしまった。
「もうこのあと自由解散だよね?」
俺が七瀬に聞くと、七瀬は頷いた。すでに体育館にいる生徒は俺と七瀬だけだった。
「急いで教室戻って帰る準備しよう?」
俺がそういうと、七瀬は頷く。俺は駆け足で教室に戻った。
教室に戻っても人はいなかった。俺と七瀬の机にリュックが置いてあるのみ。俺が自分のリュックを取って帰ろうとしたとき、七瀬が手首を掴んできた。
「累、1人で帰るの?」
そう言われて俺は「誰かと待ち合わせしてるわけじゃないから、1人だよ」と言った。すると、七瀬は満面の笑みを浮かべて、
「じゃあ、一緒に帰ろう!!」
と言った。俺は少し考える。今日は早く帰って明日の練習をしたかった。
「え…でも……」
俺がそう言いかけたが、七瀬は俺の手を取る。
「どうしても行きたいところがある!!」
と言った。俺はしぶしぶ了承する。
(今日、了承してばっかな気がする…)
俺は七瀬の行きたいところにおとなしくついて行くことにした。
七瀬が案内したのは、海だった。三月の海。
「なんで…」
俺が考えを理解できず、思わず声を漏らしていると、七瀬が横に立つ。
「なんとなく。海見てると元気出てくるじゃん!明日頑張ってって…」
七瀬は俺を励まそうとここに連れてきてくれたのだ。俺があまり乗り気じゃなかったから………。
(…明日、頑張らないとな)
俺はそう思って靴を脱ぐ。そして、海に足だけ入る。三月の海はまだ少し冷たい。
「なーなせっ!俺、明日頑張るわ!!」
俺は夕日をバックにピースしてそう言った。そのとき、七瀬の瞳がきらりと輝いた気がした。そして、七瀬はスマホのシャッターを押す。
「…っ最高の写真撮れた!!」
七瀬はそう言って俺のLINEに写真を送ってくる。そこには俺が笑顔で海の中に入っている写真があった。
(…なんじゃこりゃ)
俺は緊張しているはずなのに、こんな笑顔だ。
(明日、絶対うまく行く!)
俺はそう思った。手をギュッと握りしめる。
「帰ろう、七瀬!」
俺がそう言うと、七瀬は俺の手を引っ張って海から引き上げた。
卒業式の日。俺は先輩と離れるのが寂しかった。そして、俺たちは来年から高校三年生。受験生だ。
「先輩〜!」
俺が仲が良い町田先輩のところに行くと、先輩は俺の肩を叩いて、
「総代、応援してるから」
と言った。俺はその言葉を胸に総代を頑張ろうと思った。
結局、総代で話すとき、俺は噛みまくった。これでもかというくらい噛みまくった。
(こんな緊張するなんて……)
三年生と、三年生の保護者の前で話すのは意外に緊張した。
「累〜!!」
七瀬がこちらに向かって走ってきた。俺は避けようと思ったが、避けるような体力も残っていない。
「総代良かったじゃん!」
七瀬は開口一番にそう言った。
「全然。噛みまくったし」
と俺が言うと、七瀬は首を横に振った。
「噛んだから上手くないとかじゃなくて、気持ちが伝わればいいんだから」
七瀬はグットポーズをしながらそう言った。俺はなんだかその言葉に救われた気分になった。
〜春休み前最終登校の日〜
「はぁーっ…今日で終わりか…」
楽しかった二年生生活ももう終わりだ。このメンバーで三年生を過ごせなくなるのが悲しく思う。
「累!待って!」
俺が昇降口に入ろうとすると、七瀬が走ってきた。
(また"累"って呼んでいるし……)
俺は呆れていた。七瀬が俺を呼ぶとき、下の名前で呼ぶからだ。これに関しては、止めても治らず、呆れるしかない。
「七瀬ーっそれで呼ぶなって言ってんじゃん?」
俺がそう言うと、七瀬は頭にクエスチョンマークを浮かべているようだった。
「ま、いいじゃん!早く教室行こ!」
七瀬に手を引かれて、俺は教室に行く。
今日は掃除と全校集会でほとんど終わった。残されたのは放課後の時間。
「累…放課後、遊びに行かない?」
七瀬にそう言われて俺は仕方なく頷く。今日くらい、七瀬について行こうと思った。
「ゲーセン行こ!」
七瀬に手を引かれて俺はついていった。
「ここ、累と来たゲーセン…!」
七瀬は何故か興奮状態だった。ただのゲーセンなのに。
(どうした…こいつ……)
俺は七瀬が心配になってくる。七瀬はゲーセンの中をぐるぐると回って、台を決めている。
「これやろー!」
七瀬がそう言ってきたのは、ぬいぐるみのペアキーホルダー。
「えぇ……」
俺が微妙な反応をしているが、七瀬はおかまいなしに始める。
(取れても絶対つけないぞ……!)
俺はそう決めた。しかし、七瀬はクレーンゲームが下手なのか、全然取れない。というか、下手になった感じだ。
「…累ぃ〜とって〜」
七瀬がそう言ってきた。俺はため息をひとつ吐いて、お金を入れる。場所を合わせて……
「景品ゲット!!すごいね!!!」
クレーンゲームマシーンの機械音声が流れる。七瀬は取れたキーホルダーを眺めて、俺に一つ渡してきた。
「思い出だよ」
七瀬がそう言ってきたので、俺は受け取ってカバンにつける。すると、七瀬がまたまた手を引いてきた。
「次、ファミレス!」
そう言われて俺はまた頷くことになった。
「七瀬、なんでわざわざここのファミレスなん……」
俺がそう言うと、七瀬は無視して上機嫌でドリンクを頼んでいる。
「はい…累の」
七瀬が運ばれてきたドリンクを俺に渡す。七瀬はそのとき、少し暗い表情になった。
「七瀬…今日、なんかおかしくない?」
俺がそう言うと、七瀬は不器用な笑みを浮かべて、「そう思う?」と聞いてきた。俺はそれに対して頷く。
「だってさ……」
「?」
俺は七瀬の次の言葉を待つ。すると、七瀬は何かを決心したような表情でこちらを見た。
「…だって、今日でこのクラス終わりじゃん…!」
七瀬にそう言われて俺は頷く。というか、頷くことしかできなかった。
「そしたら…累ともクラスが分かれるかもしれない…そしたら、そしたら…もう話せなくなっちゃうかもじゃん…」
と七瀬が言った。
(え…そんなこと…?)
俺は面白かった。なんだか、七瀬が可愛い小動物に見えて。俺がくすくすと笑っていると、七瀬が少し怒った顔をしていた。
「七瀬さ、クラス分かれるかもしれないけど、俺たちは友達だろ?」
俺がそう言うと、七瀬は静かに頷く。
「友達なら、そんな簡単に捨てないし。なんならこれからも一緒に楽しく過ごそう?」
俺がそう提案すると、七瀬は顔を輝かせた。キラッキラの顔。
俺はその表情をしてくれることが嬉しかった。
「累、また春休み中!」
「おう、七瀬!」
(ん…春休み中…???)
俺は何も考えずに返事をしてしまったことに後悔する。しかし、
(もう、いっか)
七瀬の夕陽の照らされている笑顔を見ていると、そんな気持ちはどこかに吹き飛んでいった。
桜の蕾が少しずつ膨らんでくる頃、俺たちは……
明日の卒業式の準備で大忙しだ。
「そっち椅子足りる〜?」
俺はこの場にある椅子を数える。156席。あと4席だ。
「四つ足りない!」
俺がそう言うと、椅子を出している人がokサインを出した。そして、椅子を運んでいる人たちが出てくる。これでピッタリだ。
「終わったー!」俺がそう言うと、みんながわらわらと群がってくる。
(え…何…?)
俺が少し警戒していると、みんなが俺の肩を掴んでこう言った。
「一条、卒業式の在校生総代だろ?」
「頑張ってー!!!」
「カメラ構えてるから」
と口々に応援の言葉を言ってくれた。
「ありがとう…!」
俺がそう言うと、みんなはニッと笑った。そう、俺は在校生総代の役割を果たさなければならない。俺だって本当はやりたくなかったんだが……
『一条くん!君なら在校生総代いけるよ?!』
担任がそう言った。俺は笑顔で
『すみません…無理っす』
と言う。すると、先生がショックを受けたような表情をして、『じゃあ、校長先生と直接話すしかないな』と言い始めた。
(校長先生?!俺あの人苦手なんだけど……)
これ以上、抵抗すると面倒くさそうなので、俺はしぶしぶその役割を了承した。
『ありがとう、一条くん!じゃあ、明後日までに原稿提出よろしく!!』
先生はそう言って走り去っていった。俺は教室に残された。
「累、総代やるんでしょ?みんなワクワクしてるよ〜」
七瀬が横から来てそう言った。俺はしかめっ面をする。
「やりたくてやるわけじゃないけどな」
俺がそう言うと、七瀬はくすくすと笑う。俺は七瀬を見る。
(絶対こいつが総代の方がいいってぇ〜!!)
「俺の方が総代がいいとか思ってる?」
七瀬がケラケラ笑いながらそう言った。俺は心の中で思っていることを当てられ、動きが固まる。
「お、思ってない!」
俺がそう言うと、七瀬はまた笑った。
「おーい!放課後準備ありがとなー!先生から奢りのアイスだー!!」
体育館の入り口で先生がそう言った。すると、体育館準備の人たちが一斉に先生の方に走る。俺は遅れてしまうとダッシュする構えをした。すると、担任の先生が横から袋を持って歩いてきた。
「総代の君にはこっち」
と言って渡してきた。中にはお菓子やアイス……。
他の子よりも圧倒的に多い数のものを貰ってしまった。
「ありがとうございます」
俺がそう言うと、先生は俺の肩をポンと叩いて、
「総代頑張れよ」
と言った。俺はお辞儀をする。すると、横から七瀬が顔を近づけてきた。
「アイス二つあんじゃん。一個ちょーだい?」
そう言われて、俺は「仕方ねーな」と言って一つ渡す。アイスの袋を開けて一口齧る。冷たい空気が口の中に広がる。体がどんどん冷やされるのが分かる。
「うまー」
七瀬がそう言って俺も頷く。アイスの季節じゃないけど、こう言うときに食べるアイスは格別だ。
美味しくてあっという間に平らげてしまった。
「もうこのあと自由解散だよね?」
俺が七瀬に聞くと、七瀬は頷いた。すでに体育館にいる生徒は俺と七瀬だけだった。
「急いで教室戻って帰る準備しよう?」
俺がそういうと、七瀬は頷く。俺は駆け足で教室に戻った。
教室に戻っても人はいなかった。俺と七瀬の机にリュックが置いてあるのみ。俺が自分のリュックを取って帰ろうとしたとき、七瀬が手首を掴んできた。
「累、1人で帰るの?」
そう言われて俺は「誰かと待ち合わせしてるわけじゃないから、1人だよ」と言った。すると、七瀬は満面の笑みを浮かべて、
「じゃあ、一緒に帰ろう!!」
と言った。俺は少し考える。今日は早く帰って明日の練習をしたかった。
「え…でも……」
俺がそう言いかけたが、七瀬は俺の手を取る。
「どうしても行きたいところがある!!」
と言った。俺はしぶしぶ了承する。
(今日、了承してばっかな気がする…)
俺は七瀬の行きたいところにおとなしくついて行くことにした。
七瀬が案内したのは、海だった。三月の海。
「なんで…」
俺が考えを理解できず、思わず声を漏らしていると、七瀬が横に立つ。
「なんとなく。海見てると元気出てくるじゃん!明日頑張ってって…」
七瀬は俺を励まそうとここに連れてきてくれたのだ。俺があまり乗り気じゃなかったから………。
(…明日、頑張らないとな)
俺はそう思って靴を脱ぐ。そして、海に足だけ入る。三月の海はまだ少し冷たい。
「なーなせっ!俺、明日頑張るわ!!」
俺は夕日をバックにピースしてそう言った。そのとき、七瀬の瞳がきらりと輝いた気がした。そして、七瀬はスマホのシャッターを押す。
「…っ最高の写真撮れた!!」
七瀬はそう言って俺のLINEに写真を送ってくる。そこには俺が笑顔で海の中に入っている写真があった。
(…なんじゃこりゃ)
俺は緊張しているはずなのに、こんな笑顔だ。
(明日、絶対うまく行く!)
俺はそう思った。手をギュッと握りしめる。
「帰ろう、七瀬!」
俺がそう言うと、七瀬は俺の手を引っ張って海から引き上げた。
卒業式の日。俺は先輩と離れるのが寂しかった。そして、俺たちは来年から高校三年生。受験生だ。
「先輩〜!」
俺が仲が良い町田先輩のところに行くと、先輩は俺の肩を叩いて、
「総代、応援してるから」
と言った。俺はその言葉を胸に総代を頑張ろうと思った。
結局、総代で話すとき、俺は噛みまくった。これでもかというくらい噛みまくった。
(こんな緊張するなんて……)
三年生と、三年生の保護者の前で話すのは意外に緊張した。
「累〜!!」
七瀬がこちらに向かって走ってきた。俺は避けようと思ったが、避けるような体力も残っていない。
「総代良かったじゃん!」
七瀬は開口一番にそう言った。
「全然。噛みまくったし」
と俺が言うと、七瀬は首を横に振った。
「噛んだから上手くないとかじゃなくて、気持ちが伝わればいいんだから」
七瀬はグットポーズをしながらそう言った。俺はなんだかその言葉に救われた気分になった。
〜春休み前最終登校の日〜
「はぁーっ…今日で終わりか…」
楽しかった二年生生活ももう終わりだ。このメンバーで三年生を過ごせなくなるのが悲しく思う。
「累!待って!」
俺が昇降口に入ろうとすると、七瀬が走ってきた。
(また"累"って呼んでいるし……)
俺は呆れていた。七瀬が俺を呼ぶとき、下の名前で呼ぶからだ。これに関しては、止めても治らず、呆れるしかない。
「七瀬ーっそれで呼ぶなって言ってんじゃん?」
俺がそう言うと、七瀬は頭にクエスチョンマークを浮かべているようだった。
「ま、いいじゃん!早く教室行こ!」
七瀬に手を引かれて、俺は教室に行く。
今日は掃除と全校集会でほとんど終わった。残されたのは放課後の時間。
「累…放課後、遊びに行かない?」
七瀬にそう言われて俺は仕方なく頷く。今日くらい、七瀬について行こうと思った。
「ゲーセン行こ!」
七瀬に手を引かれて俺はついていった。
「ここ、累と来たゲーセン…!」
七瀬は何故か興奮状態だった。ただのゲーセンなのに。
(どうした…こいつ……)
俺は七瀬が心配になってくる。七瀬はゲーセンの中をぐるぐると回って、台を決めている。
「これやろー!」
七瀬がそう言ってきたのは、ぬいぐるみのペアキーホルダー。
「えぇ……」
俺が微妙な反応をしているが、七瀬はおかまいなしに始める。
(取れても絶対つけないぞ……!)
俺はそう決めた。しかし、七瀬はクレーンゲームが下手なのか、全然取れない。というか、下手になった感じだ。
「…累ぃ〜とって〜」
七瀬がそう言ってきた。俺はため息をひとつ吐いて、お金を入れる。場所を合わせて……
「景品ゲット!!すごいね!!!」
クレーンゲームマシーンの機械音声が流れる。七瀬は取れたキーホルダーを眺めて、俺に一つ渡してきた。
「思い出だよ」
七瀬がそう言ってきたので、俺は受け取ってカバンにつける。すると、七瀬がまたまた手を引いてきた。
「次、ファミレス!」
そう言われて俺はまた頷くことになった。
「七瀬、なんでわざわざここのファミレスなん……」
俺がそう言うと、七瀬は無視して上機嫌でドリンクを頼んでいる。
「はい…累の」
七瀬が運ばれてきたドリンクを俺に渡す。七瀬はそのとき、少し暗い表情になった。
「七瀬…今日、なんかおかしくない?」
俺がそう言うと、七瀬は不器用な笑みを浮かべて、「そう思う?」と聞いてきた。俺はそれに対して頷く。
「だってさ……」
「?」
俺は七瀬の次の言葉を待つ。すると、七瀬は何かを決心したような表情でこちらを見た。
「…だって、今日でこのクラス終わりじゃん…!」
七瀬にそう言われて俺は頷く。というか、頷くことしかできなかった。
「そしたら…累ともクラスが分かれるかもしれない…そしたら、そしたら…もう話せなくなっちゃうかもじゃん…」
と七瀬が言った。
(え…そんなこと…?)
俺は面白かった。なんだか、七瀬が可愛い小動物に見えて。俺がくすくすと笑っていると、七瀬が少し怒った顔をしていた。
「七瀬さ、クラス分かれるかもしれないけど、俺たちは友達だろ?」
俺がそう言うと、七瀬は静かに頷く。
「友達なら、そんな簡単に捨てないし。なんならこれからも一緒に楽しく過ごそう?」
俺がそう提案すると、七瀬は顔を輝かせた。キラッキラの顔。
俺はその表情をしてくれることが嬉しかった。
「累、また春休み中!」
「おう、七瀬!」
(ん…春休み中…???)
俺は何も考えずに返事をしてしまったことに後悔する。しかし、
(もう、いっか)
七瀬の夕陽の照らされている笑顔を見ていると、そんな気持ちはどこかに吹き飛んでいった。



