天国までの記憶列車

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 それから数年、あかりがいなくなった世界で、おれは生きていた。

 呼吸をし、食事をし、学校に通い、定められたレールに乗って、大人になる準備をした。途中でやさぐれてみたりもした。何日も家に帰らず、髪を銀色に染めて、おれの嫌いな世界のすべてを拒絶してみたりもした。

 でも、それは〝生きている〟というより、ただ〝止まらなかった〟だけだった。

 彼女のいない日々に慣れていくのが、ほかのなによりも恐ろしかった。

 名前を呼ばれるたび、ついあかりを重ねて振り返ってしまう。

 どこかで笑い声が聞こえると、近くに彼女の声がないか探してしまう。

 最初はそんなふうにあかりの面影を追いかけていたのに、時が経つにつれ、次第になくなっていく。おれのなかで、あかりが遠のいていく。

 だめだった。

 ――あかりを忘れてしまいそうになる自分に、おれは、耐えられなかった。