同窓会は盛り上がりを見せ、遥斗の周りには相変わらず女の子たちが群がっていたが、彼は適当に言葉をいなすと、当然のように僕らのテーブルへときた。女遊びが激しいはずの彼にとってさえ、僕ら五人は「その他大勢」とは違う、帰るべき場所なのだ。
「久しぶり....でもないな。先月、四人で飲んだし。」
遥斗がビールを喉に流し込みながら言う。
「俺は、久しぶりかな」
魚崎が少し申し訳なさそうに、けれど楽しそうにグラスを掲げた。
「お前らはちょくちょく会ってたみたいだけど、俺は教育実習の準備とか試験勉強で余裕なくて。」
「僕と隼人は、昨日も電話してたしね。」
水輝が透明感のある声で言う。
「お互いに案が煮詰まると、どうしてもね」
そうなのだ。水輝と僕は、創作に行き詰まると無音に耐えられなくなるタイプだった。何時間も通話を繋ぎっぱなしにして、相手が筆を動かす音、ため息や、独り言、息抜きには近況報告などをしている。
「え、そうなの!?俺も誘ってよ、寂しい!!」
レオが大きな身振りで拗ねてみせる。
「今度誘うよ」
僕が苦笑いしながら答えると、遥斗が身を乗り出してレオの肩を叩いた。
「てか、レオ!お前、昨日送ったメッセージの返信どうしたんだよ。既読スルーは寂しいぞ」
「ソーリー!寝ちゃってた!遥斗しつこいんだもん」
レオが笑い飛ばし、テーブルが明るくなった。
その時だった。
隣のテーブルから、僕らの心臓を直接撫でるような会話が聞こえてきた。
「太陽はやっぱこないのか」
「あー、結局欠席?会いたかったな」
「ま、アイツのことだ。どこかでバリバリ働いてんだろ」
同級生のたちの屈託のない声。
僕らのテーブルから、会話が消えた。
大河原太陽。
彼は、どうしようもなく孤独だった僕らを、あの眩しい光の中にかき集めた。
そして、僕らに新しい世界を見せておきながら、自分だけは勝手に何処かへ消えてしまった。
「....あいつ、何やってんだろうな」
魚崎が、空になったグラスを見つめていたポツリと呟いた。
「……誰か連絡取れたの?」
水輝が、手元のグラスの縁を指でなぞりながら静に問いかけた。その目に期待など1ミリも込められていなったのように見えた。
「だーれもとれてねぇよ。そもそもあいつがどこに住んでいるかすら誰もしらないんだ」
遥斗が苛立ちを隠さずに吐き捨てた。
高校の卒業式から今日まで、太陽は忽然と姿を消したままだ。
普通、それだけ長く音沙汰がなければ「事件に巻き込まれた」とか「夜逃げした」なんて不吉な噂が流れてもおかしくない。けれど、太陽に関してはそんな悪い噂なんて立たなかった。それは、彼の笑顔が、人柄が、あまりに潔白で温かかったからだろうか。周囲の誰もが、「太陽ならどこかでうまくやっている」と盲目的に信じていたからだ。
「ま、でもベストフレンドなのは変わりないさ。」
レオが努めて明るい声でいい、親指を立ててみせる。
「そうだな、死んでさえいないなら、それでいいか」
魚崎が自分を納得させるように頷く
「その生死すらわからないから、俺は焦ってんだよ」
遥斗が突き放すように言う
「連絡先だって消えてたんだ」
重い沈黙が始まりそうなとき、僕は無意識に口を開いていた
「小説とかだとさ、大抵生きてるもんだよ」
四人の視線が僕に集まる。
「大抵は、どこかに隠れているだけ。物語の後半で「実はね」って現れる。行方はどこだ、正体はなんだって読者をハラハラさせてさ」
「ここは、小説じゃないぜ、隼人。」
遥斗が自嘲気味に笑う
「わかってるよ。でも、そうでも思わないと……やってられないだろ」
もしこれが僕の書く小説なら、太陽には「消えなければならなかった理由」がある。
けれど、目の前の空席は、ただ冷たくそこにあるだけだった。
「久しぶり....でもないな。先月、四人で飲んだし。」
遥斗がビールを喉に流し込みながら言う。
「俺は、久しぶりかな」
魚崎が少し申し訳なさそうに、けれど楽しそうにグラスを掲げた。
「お前らはちょくちょく会ってたみたいだけど、俺は教育実習の準備とか試験勉強で余裕なくて。」
「僕と隼人は、昨日も電話してたしね。」
水輝が透明感のある声で言う。
「お互いに案が煮詰まると、どうしてもね」
そうなのだ。水輝と僕は、創作に行き詰まると無音に耐えられなくなるタイプだった。何時間も通話を繋ぎっぱなしにして、相手が筆を動かす音、ため息や、独り言、息抜きには近況報告などをしている。
「え、そうなの!?俺も誘ってよ、寂しい!!」
レオが大きな身振りで拗ねてみせる。
「今度誘うよ」
僕が苦笑いしながら答えると、遥斗が身を乗り出してレオの肩を叩いた。
「てか、レオ!お前、昨日送ったメッセージの返信どうしたんだよ。既読スルーは寂しいぞ」
「ソーリー!寝ちゃってた!遥斗しつこいんだもん」
レオが笑い飛ばし、テーブルが明るくなった。
その時だった。
隣のテーブルから、僕らの心臓を直接撫でるような会話が聞こえてきた。
「太陽はやっぱこないのか」
「あー、結局欠席?会いたかったな」
「ま、アイツのことだ。どこかでバリバリ働いてんだろ」
同級生のたちの屈託のない声。
僕らのテーブルから、会話が消えた。
大河原太陽。
彼は、どうしようもなく孤独だった僕らを、あの眩しい光の中にかき集めた。
そして、僕らに新しい世界を見せておきながら、自分だけは勝手に何処かへ消えてしまった。
「....あいつ、何やってんだろうな」
魚崎が、空になったグラスを見つめていたポツリと呟いた。
「……誰か連絡取れたの?」
水輝が、手元のグラスの縁を指でなぞりながら静に問いかけた。その目に期待など1ミリも込められていなったのように見えた。
「だーれもとれてねぇよ。そもそもあいつがどこに住んでいるかすら誰もしらないんだ」
遥斗が苛立ちを隠さずに吐き捨てた。
高校の卒業式から今日まで、太陽は忽然と姿を消したままだ。
普通、それだけ長く音沙汰がなければ「事件に巻き込まれた」とか「夜逃げした」なんて不吉な噂が流れてもおかしくない。けれど、太陽に関してはそんな悪い噂なんて立たなかった。それは、彼の笑顔が、人柄が、あまりに潔白で温かかったからだろうか。周囲の誰もが、「太陽ならどこかでうまくやっている」と盲目的に信じていたからだ。
「ま、でもベストフレンドなのは変わりないさ。」
レオが努めて明るい声でいい、親指を立ててみせる。
「そうだな、死んでさえいないなら、それでいいか」
魚崎が自分を納得させるように頷く
「その生死すらわからないから、俺は焦ってんだよ」
遥斗が突き放すように言う
「連絡先だって消えてたんだ」
重い沈黙が始まりそうなとき、僕は無意識に口を開いていた
「小説とかだとさ、大抵生きてるもんだよ」
四人の視線が僕に集まる。
「大抵は、どこかに隠れているだけ。物語の後半で「実はね」って現れる。行方はどこだ、正体はなんだって読者をハラハラさせてさ」
「ここは、小説じゃないぜ、隼人。」
遥斗が自嘲気味に笑う
「わかってるよ。でも、そうでも思わないと……やってられないだろ」
もしこれが僕の書く小説なら、太陽には「消えなければならなかった理由」がある。
けれど、目の前の空席は、ただ冷たくそこにあるだけだった。
