それから彼女と僕の交流が始まった。
学校一の美少女で、明るくて社交的な香野さんは
いつも笑顔でみんなに愛されるヒロイン的な
存在だった。
対して僕は地味で陰キャで
誰からも必要とされない根暗男子。
そんな僕になぜ香野さんが話しかけてきたのかは
謎だが、……嬉しかった。
学校でも家でも独りの僕を
まっすぐに見つめてくれるその瞳が。
ふと脳裏に蘇るのは薄暗いリビングで
黙々とカップラーメンを食べる幼い日の自分。
「天馬?」
その言葉に反射的に顔を上げると、
香野さんが至近距離で不思議そうな顔を向けていた。
「わっ!ちょ、ちょっと!近い!近いよ!」
椅子ごと後退り後ろにひっくり返りそうになるが
何とか踏みとどまる。
「ハハハッ!!天馬慌てすぎっ」
おかしそうに笑う香野さんに恥ずかしくて
誤魔化すような笑みを浮かべた僕は
元の位置に戻る。
「それで、何の話だったっけ?」
「もうっ!全然話聞いてないじゃんっ
新しい曲ができたから
天馬に聞いて欲しいって話!!」
「そ、そっか。ごめん。
でもなんで僕に?」
「天馬、音楽好きでしょ?」
その言葉に目を見開く。
「なんで……」
「だってあたしが歌ってる時気持ち良さそうな顔してるじゃん?だから、
1番最初に天馬に聞いてほしくてさ」
「僕が、気持ち良さそうな顔を?」
「天馬ってば何言ってんの。ボケてる?天然?
とにかく放課後、教室集合ね!」
そう言い終わるや否や香野さんは
女友達の元に行ってしまった。



