セオドリックは、レイモンドの右手を、そっと、重ねるように取った。
「君は僕を孤独から救い、僕は君に居場所を与える。……ずっと前から、決めていたんだ。君が自分を追い詰めすぎて壊れてしまわないように、僕が必ず、君の安らぎを守ってみせるとね。君が影に潜むなら、僕がその影ごと、すべてを照らす光になる」
「……お前、本気で言っているのか」
「本気だよ。……レイ。君には価値がある。少なくとも、僕という王が正気で生きていくために必要な、唯一無二の安らぎとしての価値がね」
レイモンドは絶句し、少しだけ気まずそうに視線を逸らした。
だが、その耳朶は微かに赤く染まっている。セオドリックは、その沈黙を逃がさないように、より深くその手を握りしめた。
「……傲慢な言い草だ。結局、俺はお前を地上に繋ぎ止めるための重石として、一生隣にいなきゃならないわけか」
「ああ。それは僕の権利で、君の義務だ。……逃がさないよ、レイ」
テラスを吹き抜ける風が、二人の髪を揺らす。
レイモンドは、隣に立つ男の圧倒的な熱量と、自分に向けられた一点の曇りもない慈愛を認め、ようやく静かに微笑んだ。
「……ふっ、いいだろう。……お前を人間として繋ぎ止めておけるのは、結局のところ俺くらいしかいないからな」
星々の瞬きの下、二人の影はテラスに長く伸び、重なり合って一つの色を落としていた。
新生アルカディア帝国の歴史は、ここから、この二人によって紡がれていく。
Fin.
