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学園を包むのは、どこまでも突き抜けるような青空と、暴力的なまでに騒がしい蝉時雨だった。
あの大混乱に陥った記念祭から二週間。レイモンド・アシュクロフトは、かつてないほど重い足取りで、生徒会室の重厚な扉を押し開けた。
「……失礼する。今日から、生徒会に復帰して――」
「遅すぎます、副会長!!」
挨拶が終わるより早く、弾丸のような叫びがレイモンドを貫いた。
反射的に身を強張らせたレイモンドの視界に飛び込んできたのは、机の上にそびえ立つ、文字通り『塔』と化した書類の山。そして、その影から目の下に凄まじい隈を作って現れた、書記のミレイだった。
「……ミレイ。すまない、まだ少し……」
「『すまない』で済むと思ってるんですか!? 副会長が血を吐いて、右腕をあんなボロボロにして担ぎ出されていくのを見た時、私たちがどれだけ……どれだけ、生きた心地がしなかったか!」
ミレイの声が震える。かつて壇上で、裏切り者の汚名を被ったレイモンドを絶望の目で見つめた彼女。その直後の真実と、彼が負った代償の重さに、彼女ら生徒会メンバーは深い悔恨の中にいた。
「もう二度と、あんな真似はさせませんから。見てください、この書類! 記念祭の中止に伴う払い戻し、各部活動への始末書、それに……!」
ミレイは震える指で、部屋の最奥――逆光の中で泰然と座るセオドリックを指差した。
彼は優雅に脚を組み、一冊の古い魔導書をめくっている。だが、その周囲には一通の未処理書類もなく、それどころか彼は、レイモンドが部屋に入ってきたことさえ無視して本に没頭していた。
「会長はさっきから『僕が認める公爵が隣にいないと、ペンが重くて持てない』なんて、わけのわからないことを言って、一文字も書いてくださらないんです! おかげで全部、副会長のデスクに積み上げることになったんですよ!」
「……公爵、だと?」
