高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 セオドリックの問いは、静かだった。だが、その言葉は鋭い刃のように、レイモンドの傷口を正確に抉った。

「……信じていなかったわけじゃない。寧ろ、逆だ。お前に言えば、きっと解決してくれる。でもそれは、お前の犠牲の上に成り立つものだろう。……俺は、お前にも、お前の家名にも泥を塗りたくなかった。アシュクロフトの俺なら、汚れ役はいくらでも代われる。……だから」
「泥? 家名?  君はまだそんなつまらないものを気にしていたのか」

 セオドリックは、レイモンドの顎を指先で掬い上げ、拒絶を許さない力でこちらに向けさせた。

「君を守るためなら、僕は家ごと国を捨てたのに。……君という精密な制御装置がなければ、僕の力はただの破壊の嵐だ。……ねえ、レイモンド。君を僕の隣から離さないためなら、僕は喜んで『悪の王』にだってなるさ。それが僕の生きる意味なのだから。……もう、どこへも逃がさない。君の寿命も、魔力も、その焼き切れた未来も、すべて僕が買い取った。……拒否権はないよ」

「……っ、……お前は、本当に……傲慢な男だ。……勝手に、人の人生まで買い取りやがって……」

 毒づきながらも、レイモンドは目元を覆うようにして、セオドリックの胸へと顔を埋めた。
 二度と光の中へは戻れないと思っていた。だが、この傲慢な友人は、光も闇もひっくるめて、自分という存在を丸ごと飲み込んでしまったのだ。

 夕闇が迫る室内で、二人の魔力は指輪を通じて静かに、深く混ざり合っていく。
 それは契約よりも重い、呪いのような、しかしこの世界で最も確かな救済だった。