高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 セオドリックは椅子を引き寄せ、レイモンドを追い詰めるように顔を近づけた。

「そのレプリカに巨大な負荷(エネルギー)がかかった瞬間、その負荷の八割を、本物の指輪をはめた僕へと転送されるように調整しておいたんだ。僕は転送されたその莫大なエネルギーを魔力に変換し、君の細胞を死滅から救い、強引に温存した。……この術式を書き込むために、高価な指輪を二十個以上も灰にしたよ」

「……お前、……まさか、自分の魔力回路を予備のバッテリー(・・・・・・・・)にしたのか!? もし変換が追いつかなければ、お前の命が……!」

「ははは! 怒るポイントが相変わらずズレているね。……普段通りの君なら、渡された瞬間にレプリカだと気づいたはずだ。でも、君は気づかなかった。余裕をなくし、自分一人で全てを背負おうとするあまり、僕という存在を正しく視ることができなくなっていた。……僕はそれが悲しかったし、……少しだけ、腹も立ったんだ」

 セオドリックは、レイモンドの包帯が巻かれた右手を、壊れ物を扱うように両手で包み込んだ。その手のひらから、暴力的なほどに純粋な魔力が流れ込んでくる。

「……それにね、レイ。残念だけど、君の言う通り……例え細胞が残っても、魔法を紡ぐための『回路』は二度と戻らない。……だから、僕は僕の回路を、君の右腕に直接繋いだ。……その指輪(レプリカ)は、もうただの魔道具じゃない。僕と君を結ぶ、共有の血管だよ。……文字通り、君はもう僕なしでは(・・・・・)魔法さえ使えない(・・・・・・・・)身体になったんだ。僕が供給を止めれば、その腕はまた動かなくなる。……悲しいことだ」

 セオドリックの碧い瞳には、底知れない執着と独占欲が渦巻いている。
 レイモンドは、自分自身の甘さを恥じた。セオドリックを救ったつもりでいたが、実際にはその掌の上で転がされ、救われ、そして永遠に逃れられない檻へと閉じ込められたのだ。

「……ねえ、レイ。どうして僕に相談しなかったんだい? ベルツの脅迫も、泥を被る決意も。それに……あの禁忌術式。……僕を信じていなかったのかい?」