自分の体には、指向性魔導抹殺陣のエネルギーが直撃し、さらに禁忌の代償を支払ったのだ。肉体が残っていることさえ、理論上あり得ないはずだった。
なのに、腕があるどころか、焼き切ったはずの魔導回路まで復活している。
「どうして、だって? 君らしくもない。答えは、君の指にあるよ」
セオドリックが視線で示した先。包帯の隙間から、学園守護の指輪の銀の縁が覗いていた。
「指輪……? どうして、まだ、俺の指に……」
レイモンドの眉が動く。
これは学園の全権を象徴する、世界に一つだけの指輪。本来の持ち主はセオドリックだ。それに、あの地下の爆風と熱量の中で、指輪は腕ごと焼け落ち、奈落へ消えたはずだった。それがなぜ、今もなお自分の指に嵌まっているのか。
「……気づかなかったのかい? あんなに二人で共同開発に没頭していたというのに。……レイ、君に渡したその指輪は、僕が作らせた精巧な偽物だよ」
セオドリックが、自身の右手の薬指を空中で軽く動かした。すると、そこには何もなかったはずの空間から、波紋が広がるようにして『もう一つの指輪』が姿を現した。
セオドリックが不可視魔法で隠し持っていた、本物の学園守護の指輪だ。
「レプリカ、だと……?」
「そう。春の終わり頃だったかな。君の様子が少しずつおかしくなっていた。僕に隠れて何かを嗅ぎ回り、誰かに怯えている……。だから僕は、保険をかけたんだ。本物の指輪から権限だけを一部転移させたレプリカを作り、そこに僕たちの誇りである『不落の城塞』の理論を組み込んだ。……受けた攻撃を吸収し、自身の魔力へと変換する……あの回路だよ」
