学園最下層、魔導核回廊。
そこには、炭化した右腕を抱え、冷たい石床に横たわるレイモンドの姿があった。
荒い呼吸、激しい吐血の跡。
死の淵で薄れゆく意識の中、レイモンドは「これで、あいつは守られた」と、孤独な完遂に身を任せようとしていた。
だが、その闇を、暴力的なまでの黄金の光が切り裂いた。
「……レイ!」
聞き慣れた、傲慢なまでに自信に満ちた声。
転移の余光の中で、セオドリックは跪き、ボロボロになったレイモンドの身体を、壊れ物を扱うような手つきで抱き上げた。
「……ふ、……っ、馬鹿、か……。真っ先に……騎士団に、戦果を、報告……しにいけよ……」
毒づこうとするレイモンドの口から、血が溢れる。
セオドリックは、炭のように焼け、二度と魔法を紡げぬ形になったレイモンドの右手を自分の頬に寄せ、激情の滲む声で囁いた。
「そんなものに、君以上の価値があるものか。……よく頑張ったね、レイモンド。……さあ、帰ろう。僕たちの場所に」
レイモンドは、セオドリックの胸の温もりの中で、ようやく全ての重荷を下ろした。
自分は裏切り者として泥を啜った。だが、この男だけは、最初から最後まで自分の正体を見抜いていた。
その敗北感こそが、彼にとって唯一の、そして最高の救いだった。
レイモンドは微かな安堵と共に、セオドリックの腕の中で意識を失った。
