高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~



 地下最下層、魔導核回廊。

 地上の抑制ガスが最も濃く溜まり、魔導灯さえも消えた完全なる闇の世界。レイモンドは、ログが示した地点へ辿り着いた。
 そこに鎮座していたのは、巨大な魔石を機械式の信管に組み込んだ、指向性魔導抹殺陣『マナ・イレイザー』。魔導師の魔導回路を永久に破壊する、恐ろしい兵器。
 このサイズであれば、大講堂にいる全員の魔導回路を焼き切ってしまえるだろう。
 その時限装置の針が、刻一刻と「その時」を刻んでいた。

「――やはり来たか。アシュクロフトの神童殿」

 回廊の突き当たり、闇が蠢いた。
 現れたのは、ベルツの影として汚れ仕事を請け負う三人の処刑執行人(クリーナー)(レイヴン)』だ。彼らは魔力を捨て、機械と薬物で身体を強化した、非魔導戦闘員。
 彼らは魔法が消えたこの空間で、唯一の捕食者だった。

「やはり、お前たちの主の目的はこれだったか。……ランカスターの名声を奪うのではなく、魔力を奪い、自分と同じ『無能』まで引きずり下ろすこと。それが、法務大臣ベルツの行動原理か」
「ああ、そうだ! だがもう遅い! 爆弾なら解除コードも通じただろうが、これは機械式の物理駆動。魔法が不発に終わるこの場所で、お前はどうやってこれを止めるつもりだァ!!」

 鴉たちが一斉に飛びかかってくる。
 レイモンドは、右腕を覆う袖を乱暴に引きちぎった。

「……計算通りだ。……お前たちの考えなど、すでに俺の演算の内だ!」

 剥き出しになった右腕の痣から、漆黒の影が溢れ出す。
 アシュクロフトの禁忌――『影喰(かげくい)』。
 それは外部の魔力を必要としない。自らの肉体、寿命、魂そのものを燃料に物質化する、呪いの自食兵器だ。

「なっ、魔法は使えないはずだ……!? 何故……ッ!」
「……この術は、お前たちの主が憎む『魔法』じゃない。……ただの、俺の執念だ!」