レイモンドは懐から、ベルツに渡された、偽造された内部告発文書を高く掲げた。
同時に、講堂の扉が乱暴に跳ね飛ばされる。なだれ込んできたのは、武装したベルツ直属の特務班だ。
「セオドリック・フォン・ランカスター! 及び生徒会役員諸君! 国家反逆の疑いで拘束する!」
ベルツが悠然と立ち上がり、冷酷な勝利の笑みを浮かべた。
「……やれやれ。まさか、最も信頼していた人間に裏切られるとは不憫なことよ。ランカスターの栄光も、今日で終わりのようだ」
レイモンドは、セオドリックの顔を見ることができなかった。
右手の痣が、引き裂かれるような熱を持って脈打っている。
「……レイ。本当に……君が?」
セオドリックの声は、驚くほど静かだった。
拘束術式を構えた兵士たちに囲まれながら、彼はただ、自分を売った男の背中を、悲しいほどに澄んだ瞳で見つめていた。
「……そうだ。俺は、没落した我が家の再興のために、お前という商品を売った。……それだけだ、セオドリック」
レイモンドは、一度も振り返ることなく、壇上から降りた。
つい先程まで自分を慕っていたミレイや生徒たちの、悲鳴と罵声が背中に突き刺さる。
ベルツの隣へと歩み寄るレイモンドの姿は、太陽を裏切り、世界を闇に突き落とした「最悪の裏切り者」そのものだった。
