七月七日。記念祭当日。
昨夜の雷雨が嘘のように、帝都ラプラスの空はどこまでも高く、突き抜けるような青に染まっていた。
校門が開くと同時に、帝都中から集まった人々で学園は溢れかえった。
広場には揚げ菓子の甘い匂いと、吹奏楽部の奏でる軽快なマーチが響き渡り、模擬店の呼び込みをする生徒たちの声が祝祭の熱気をさらに押し上げている。
「副会長、昨日のバイパス回路の調整、完了しています! 驚くほど出力が安定しました!」
朝の最終確認。生徒会室を飛び出そうとしたミレイが、弾けるような笑顔でレイモンドに告げた。彼女だけではない。役員たちは皆、不眠不休の疲れも見せず、誇らしげに自らの役割を全うしている。
「……そうか。よくやった。あとは、お前たちの実力を信じている」
レイモンドがそう応えると、ミレイは「はいっ!」と力強く頷き、喧騒の中へと駆けていった。
有能に育った部下たちの背中を見送りながら、レイモンドは懐の魔導時計を指先でなぞった。
(――反逆開始まで、あと一時間)
眩しすぎる光景だ。
自分が愛し、守ろうとしてきたこの日常が、あと一時間で、自分自身の手によって「汚職と反逆の舞台」へと塗り替えられる。
「素晴らしい景色だ、レイ。皆、君が作り上げたこの祭典に酔いしれているよ」
背後から、陽光を纏ったような声がした。
セオドリックだ。ミッドナイトブルーの正装を完璧に着こなした友は、いつになく上機嫌でレイモンドの肩に手を置いた。
「行こう。最後に見回っておきたい場所があるんだ」
