記念祭を翌日に控えた夜。帝都を激しい雷雨が襲っていた。
生徒会室の窓を叩く雨音は、まるで巨大な獣の咆哮のようだ。窓硝子が震えるたびに、不気味な稲光が、壁にレイモンドの影を浮かび上がらせる。
レイモンドは、自らのデスクで最後の『点検』を行っていた。
彼の脳内には、明日のスケジュールが冷徹な魔導演算のように展開されている。
(――午前十時、記念祭開幕のスピーチ。セオドリックが登壇すると同時に、第三結界塔に仕込んだバイパス回路を遠隔起動する。警備魔導師たちの網を一時的に休眠させ、ベルツの私兵を不審者排除の名目で壇上へ。……そして俺は、ベルツにすべての罪状を差し出し、セオドリックを『被害者』として切り離す。そして地下に仕掛けてある端末から、ベルツ腐敗の証拠映像を転送する。ベルツの抵抗に備えて、念の為あの術式も用意せねば)
数式にミスはない。隠蔽コードも完璧だ。
あとは、その時を待つだけ。
右手の薬指に嵌まった|学園守護の指輪(ラプラス・ガーディアン)――その効力を押さえるために繰り返した隠蔽ジャミングの代償――による痣の疼きとも、明日でおさらばだ。
