高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 辿り着いた北西の結界塔。重厚な鉄の扉が魔力認証を経て開き、彼を迎え入れる。扉が閉まった瞬間、祝祭の喧騒は遮断され、墓所のような静寂が訪れた。

 刹那――レイモンドは、冷たい壁に背を預けて崩れ落ちた。

「……ハハ。そうか。そうだ、その通りだ」

 乾いた笑いが漏れる。
 ミレイはミスを見抜き、生徒たちは自分がいなくても祭典を楽しんでいる。そして自分は、もう無垢な生徒を怯えさせるだけの「異物」でしかない。

「……ならば」

 レイモンドは、右手の痺れる指先で、ログを強く握りしめた。痣の痛みが、今の自分と闇を繋ぐ唯一の証のように思えた。

「……俺に残された『俺にしかできない仕事』は、もうこれだけか」

 愛する者たちの完成を確信したからこそ、彼は独り、奈落への階段を降りる決意を固めた。
 その背中を、夕刻の長い影が冷たく飲み込んでいく。

 ――これでいい。
 ――彼らが、セオドリックが……俺のいない光の中でも生きていけるのなら、俺は安心して地獄へ行ける。

 歪んだ安堵を胸に、レイモンドは再び歩き出した。
 その足取りには、もはや迷いも、救いへの期待も残されてはいなかった。