一歩外へ出れば、廊下は機材を運ぶ生徒や飾り付けに奔走する役員たちで溢れかえっている。レイモンドは、彼らの間を縫うように進んだ。
(……まさか、ミレイに気づかれるとは。他の塔は大丈夫か? 隠蔽コードを書き直さなければ……いや、その前にベルツ側に報告を……)
頭の中で最悪のシナリオが渦を巻く。急ぎ足で北西の第三結界塔へと続く渡り廊下を突き進む。
だが、人気のない廊下を曲がろうとした瞬間、不意に、半年前の冬の記憶がフラッシュバックした。
セオドリックから七日間の休養を言い渡され、生徒会を不在にした数日間。
学園は、生徒会は、何一つ滞ることなく回り続けていた。
「――ハッ」
乾いた声が、静かな廊下に虚しく響く。
自分が「俺にしかできない」と思い込んでいた実務のすべてが、実はもう、彼女たちの手で代行可能になっている。
(……俺は、もう、必要ない)
セオドリックの隣に立ち続ける唯一の資格――圧倒的な『有能さ』。それが今、自分の手から砂のように零れ落ちていく感覚。
自分が消えても、セオドリックの掲げる「光の王国」は、ミレイたち有能な部下の手で守られ、完成されていくのだ。そこに、自分という名の汚点は、もういらない。
思考が深い闇に沈み、世界の色彩が失われていく――その時だった。
「あっ、危ない――っ!」
