高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 本音を言えば、今すぐにでも副会長なんて辞めてやりたい。
 だが、平民同然に落ちぶれた自分を「必要だ」と言い切った男の隣にいることは、かつて失った尊厳を取り戻すための、唯一の手段だった。

 ――レイモンドは、胃を焼くような焦燥感に耐えながら、廊下の隅を這うように歩く。

(……気が重い。それに、ここのところ、あいつの様子が明らかに変だ)

 レイモンドは知っていた。セオドリックという男は、一度「これが正しい」と信じれば、それを成し遂げるまで絶対に引かない男であることを。
 そして彼が、レイモンドの誕生日を、あろうことか「祝福すべき日」だと本気で信じ込んでいることを。

(去年、俺の誕生日を聞き出すだけで随分必死だったからな。……まさかとは思うが……)

 その日の放課後。レイモンドは、重い足取りで生徒会室へと向かっていた。
 セオドリックから頼まれた、一年生への魔導回路の指導のためだ。人前に出るのは反吐が出るが、あの真っ直ぐな瞳で「君の術式は学園の宝だ」などと頼まれれば、術者としての矜持が邪魔をして、拒むことはできなかった。

(手早く教えて、一時間で切り上げる)

 そう自分に言い聞かせ、レイモンドは生徒会室の扉の前に立った。

 中からは、人の気配がほとんどしない。一年生たちが緊張して待っているのだろうか。それとも、やはりこれは罠なのか。
 心拍数は既に限界に近い。手汗でドアノブが滑る。
 レイモンドは、意を決して扉を押し開けた。

「……失礼する。約束の設計案を――」