高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 やがて、敷設した術式が微かな反応を返す。闇の奥から、数人の足音が響いてきた。

「……遅いぞ。俺を待たせるなと言ったはずだ」

 レイモンドは、闇の中へと冷たく言葉を放った。

 現れたのは、業者の作業着に身を包んだ三人の男たち。ベルツが「法規の維持」という名目のもとに飼い慣らしている、特務工作班の実行部隊だ。
 リーダー格の男は、レイモンドの正面で足を止めると、足元の床を見て薄笑いを浮かべた。

「昼間の下見にはなかったはずの、警報術式(アラーム)……。これほど精密なものを、この短時間で。流石は『生徒会長の懐刀』、副会長殿だ。お見それした」

 男は皮肉を交えながらも、レイモンドの技術力に確かな警戒の色を見せた。
 レイモンドは表情一つ変えず、懐から一枚の羊皮紙――第三結界塔のバイパス回路の仕様書を取り出し、男の胸元へ突きつけた。

「……これを閣下に。記念祭前日、俺がメンテナンスの名目で、警備ゴーレムを三十分間休眠させる。ベルツ閣下の言う『舞台装置』の設置は、その間に行え」
「承った。……それにしても、没落貴族の恨みというのは合理的で恐ろしい。これほど鮮やかに主君の城の喉元を差し出すとはな」
「……黙って計画を完遂しろ」

 レイモンドは冷たく言い放ち、翻った。
 彼らが設置する舞台装置が、セオドリックを救うための、そして陥れるための残酷な鍵となる。
 その矛盾に胸の奥が焼けるようだったが、足取りは決して乱さなかった。