記念祭まで、あと二週間。
窓の外では、祝祭の到来を告げる装飾が日に日に増え、学園全体が華やいだ空気に包まれている。
だが、レイモンドは心中穏やかではいられなかった。
昼間、生徒会執務室に届いた「改修業者からの定期報告書」。その隅に記された、アシュクロフト家の紋章を歪めたような染み――ベルツから、招集の合図がかかっていたからである。
深夜。学園北端、改修中の旧校舎。
レイモンドは「進捗の抜き打ち点検」という名目のもと、灯りのない地下保管庫へと足を運んでいた。集合時間の三十分前には到着し、背後を壁で守れる位置に陣取る。
念のため、入り口付近には侵入者の魔力波形を感知する簡易的な警報術式を不可視の状態で敷いておく。ベルツが自分を信用していないように、レイモンドもまた、この闇に潜む連中を微塵も信じてはいなかった。
湿った冷気が肌を刺し、右の薬指に嵌まった『学園守護の指輪』が、正統な持ち主とのリンクを維持しようと脈打っている。
レイモンドは深く息を吐き、魔導演算による高密度の隠蔽を起動させた。
指輪の信号を一時的なノイズへと変え、自身の存在を学園の監視網から抹消する。その瞬間、魂を無理やり引き剥がされるような鋭い孤独感が彼を襲った。
