高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 六月も半ばを過ぎる頃、降り続いていた雨は上がり、学園には初夏の陽気が満ち始めていた。
 だが、レイモンドの日常は、欺瞞(ぎまん)という名の薄氷の上を歩む日々へと変貌していた。

 記念祭の準備に追われる学園内。

「副会長、この出展ブースの魔導配線、チェックをお願いします」
「アシュクロフト君、記念祭当日の警備魔導師たちの配置、君の案で最終決定として良いかね?」

 行き交う生徒たちの信頼に満ちた声、教師たちの期待を込めた眼差し。それらを受け止めるたび、レイモンドの胃の奥にはどろりとした泥のような罪悪感が溜まっていった。

 彼は事務処理の合間を縫って、学園に設営業者として出入りするベルツの手駒たちへ、結界の脆弱なポイントを記したメモを渡し、ログを改竄し続けた。夜、図書室の隅でベルツからの新たな指令書を灰に変えながら、レイモンドは鏡に映る自分を見るのを避けた。
 自分の演算能力は、今や愛する学園を売り、セオドリックの理想を汚すためだけに消費されている。