高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 それは、致命的な技術的虚偽だった。

 外された三箇所は、過激派……いや、ベルツの手駒が、結界の警報を鳴らさずに内部へ侵入するための『盲点』だ。
 自らが心血を注いで構築した完璧な防衛網に、自らの手で穴を開ける。その屈辱に、吐き気がした。

「いいや、問題ないよ。君が言うなら、それが最善なんだろう。……ただ、少し意外だっただけさ。君はいつだって、効率を優先するリアリストだと思っていたからね」

 セオドリックは、ティーカップを置いてレイモンドの側に歩み寄った。
 雨の湿り気が、セオドリックの纏う高貴な香りを引き立てる。彼はデスクに両手をつき、逃げ場を塞ぐようにして、レイモンドの顔を覗き込んだ。

「顔色が悪いね。……寒いのかい、レイ」

 言うが早いか、セオドリックはレイモンドの冷え切った左手を、自らの両手で包み込んだ。

 セオドリックの体温。そして、彼の指に嵌まった学園守護の指輪(ラプラス・ガーディアン)から流れ込む、拍動のような魔力の波。
 それはかつて、二人が防衛魔導具を共同開発した際、レイモンドが心地よいと感じた、あの信頼の熱と同じだった。