六月の雨は、低く垂れ込めた雲から絶え間なく降り注ぎ、白亜の学園を灰色に塗り潰していた。
分厚い石壁に遮られた生徒会執務室の中には、暖炉の薪が爆ぜるかすかな音と、時計の針が時を刻む規則的な音だけが響いている。
本来なら、レイモンドにとって最も集中できるはずの静寂。だが、今の彼にはその一秒一秒が、処刑台への階段を上る足音のように聞こえていた。
レイモンドは、デスクに広げた『記念祭・結界防衛配置図』を凝視していた。
一週間前、あの漆黒の封書を受け取ってから、彼の眠りは浅い。瞼を閉じれば、ベルツ公の冷酷な瞳と、泥に塗れた父の遺影が、暗い海の底から彼を呼び戻すのだ。
「――レイ。そこ、三箇所ほど術式のバイパスを書き換えたね? 魔導騎士団の直通回線を外して、学生ボランティア用の低出力ラインに接続し直しているようだけど」
背後から、一切の淀みのない、穏やかな声が響いた。
レイモンドの背筋に、氷の刃でなぞられたような戦慄が走る。彼はペンを握る指に力を込め、表情を殺したまま、ゆっくりと振り返った。
「……よく気づいたな。当日は一般客の往来が激しい。騎士団の強力な魔力波形は、精密な魔導展示に干渉する恐れがある。ボランティアのラインを経由させることで、出力を平準化させるのが狙いだ。……何か、不服か?」
