高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 机の上に置かれていた、一通の漆黒の封書。
 封蝋には、帝国の法を司る内閣法務大臣、ボリス・フォン・ベルツの紋章が刻まれていた。

 レイモンドの手が微かに震える。
 ベルツ――十年前、父に魔導石横領の濡れ衣を着せ、アシュクロフト家を処刑台へと送り込んだ男。幼いレイモンドが法廷の隅で見た、冷徹な死神の顔。

 封を切り、中身を目にした瞬間、レイモンドの視界に鮮血のようなフラッシュバックが走った。
 同封されていたのは、父の冤罪を証明する真実の記録……ではなく、当時の冤罪資料をさらに改竄(かいざん)した告発状だった。

『……当時のアシュクロフト侯の横領は、現ランカスター公爵の教唆(きょうさ)によるものである……』

 息が止まった。

 ベルツの狙いは明白だ。この偽造文書を(おおやけ)にすれば、アシュクロフトの汚名は(そそ)がれるどころか「ランカスターの忠犬」として二重に呪われ、そして何より、セオドリックの父、ひいてはセオドリック自身の次期宰相候補としての地位が永久に剥奪される。

『記念祭の当日、君がセオドリックを裏切り、結界を無力化せよ。さもなくば、この記録を公開し、ランカスター家を法的に抹殺する。アシュクロフトの再興を願うなら、賢い選択をすることだ』