高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 五月の陽光は、残酷なほどに透き通っていた。

 アルカディア神聖帝国中心部に位置する、王立ラプラス魔導アカデミー。
 かつてアルカディア帝国が周辺諸国を併呑(へいどん)し、巨大な版図を築く以前の王国時代から、この地には変わらぬ魔導の静寂が流れている。

 帝都の喧騒を拒絶するように屹立(きつりつ)する白亜の校舎は、今や帝国の威信を体現する学び舎であり、同時に、次期宰相候補たるセオドリック・フォン・ランカスターを頂点とした、美しくも歪な階級社会の苗床(なえどこ)でもあった。

 放課後の生徒会執務室。
 窓から差し込む斜陽(しゃよう)が、壁に掛けられた歴代会長の肖像画を赤く染めている。その中で、一際豪奢な椅子に身を預けたセオドリックは、退屈そうに金色の髪を指で(もてあそ)んでいた。

「――レイ。君、また僕の書類を勝手に片付けたね? どこにやったんだい、先週の魔導石の輸入許可証は。あれは僕が、後でじっくりと鑑賞(・・)しようと思っていたのに」

 セオドリックの碧い瞳が、不満を装った愉悦(ゆえつ)と共に、奥のデスクで黙々とペンを走らせる青年――レイモンド・アシュクロフトを捉える。

「右から三番目の引き出し、一番下だ。……鑑賞だと? お前が書類の上に揚げ菓子(ベニエ)の食べかすを零して、羊皮紙を油塗れにするから避難させておいただけだ、この馬鹿」