数分後。
レイモンドが朦朧とした意識の中で目を開けると、そこには、セオドリックの顔のドアップがあった。
「……う、……地獄か。ここは、地獄の底か」
「いいや、天国(僕の隣)だよ、レイ。さあ、顔を上げて。僕の真のパートナー」
セオドリックは、混乱するレイモンドの手を強く握りしめ、高らかに宣言を続けた。
「さっきの続きだ! 影(副会長)はもう必要ない、君には僕と対等の地位――『アシュクロフト公爵』を名乗ってもらうよう、陛下に親書を書いておいた! 君の(孤独な)存在をここで終わらせ、僕との(運命的な)絆を世界に知らしめるんだ!」
レイモンドの脳裏に、先ほどのセリフの全貌が、最悪な形で補完されていく。
(君という存在は、あまりに有能すぎた。僕の隣……という光り輝く場所にいるには……今は……あまりに深い影……という不遇な身分を背負いすぎている……)
「……待て。セオドリック、待て。お前、さっき『掃除』って言ったよな? アシュクロフトを掃除するって……」
「ああ、それは君の家名についた汚泥を、僕の権力で完璧にクリーニング(清掃)してあげるという意味だよ。さあ、明日の朝刊には僕たちのツーショット写真と、『生涯を共にする誓い』の声明文が載る予定だ。学園の広場には、僕たちの友情を記念した銅像も建てよう」
「……やめろ。死なせてくれ。お願いだ、さっきの剣で今すぐ殺してくれ」
レイモンドは絶望のあまり、顔を覆って祭壇に伏した。
数分前の死の恐怖など、この社会的・精神的な公開処刑に比べれば、微々たる問題でしかなかった。
「ははは! 照れなくていいんだよ、レイ! さあ、礼拝堂を出よう。外には僕たちの門出を祝うために、吹奏楽部と騎士科の精鋭たちを待機させてあるんだ」
「……貴様、本物の悪魔か……ッ!!」
深夜の学園に、レイモンドの魂の叫びが虚しく響き渡る。
こうして、レイモンドが覚悟した高潔な死は、セオドリックが用意した叙任式という名の爆撃によって、跡形もなく粉砕されたのである。
To be continued.
