高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 セオドリックの思考は、その眩しすぎる正義感ゆえに、常にレイモンドの予想のナナメ上を爆走していた。
 最近、彼がレイモンドの首筋をじっと見つめていたのは、叙任式の際に授ける勲章(・・)のサイズを、目測でミリ単位まで計っていたからに他ならない。

「ただ発表するだけではつまらない。ここは学園の伝説に残るような、古風で神秘的な演出が必要だ……。よし、地下礼拝堂だ。あそこなら、僕と彼の絆を誓い合うのに最高の舞台になる!」

 セオドリックは、古びた騎士道物語の愛読者でもあった。
 彼は真剣な顔で、招待状をしたためる。
『深夜二時。学園北東の地下礼拝堂へ来い。二人きりで話がある』
(よし、簡潔で格好いいぞ! 隠密性もバッチリだ!)

 次に彼は、当日の台詞を練習し始めた。
「レイ、僕は決めたんだ。……(副会長なんていう不自由な)影は、もう必要ない」
「君という存在は、あまりに有能すぎた。僕の隣(という光り輝く場所)にいるには……(今は)あまりに深い影(身分)を背負いすぎている」

 セオドリックは、自らの完璧な台詞回しに陶酔し、鏡の前で不敵な笑みを浮かべる練習までした。
 彼としては、頼もしすぎる主君を演じているつもりだったが、その顔はどう見ても獲物を追い詰める暗殺者のそれになっていた。

「仕上げは聖剣だ。これで彼の肩を叩き、叙任の誓いを行う。……ああ、レイ! 君はきっと驚き、感動のあまり言葉を失うだろうね」

 彼は当日、より特別感を出すために、あえて冷たい態度を装った。驚きは大きければ大きいほどいい、という勘違いしたサービス精神ゆえである。
 そして深夜。彼は埃まみれの礼拝堂に、わざわざ重厚なマントを羽織って現れた。

「……ふふ、暗くて何も見えないな。だが、これがいい。この暗闇から僕が光(聖剣)を持って現れれば、演出効果は最大だ」

 彼は祭壇の前で、抜き身の剣を構えながら、愛する親友が罠とも知らずにやってくるのを、ワクワクを必死に抑えた冷徹なツラで待ち構えていたのである。