心臓が、跳ねた。
レイモンドの最悪の予想が、最悪の形で肯定された瞬間だった。
セオドリックは、剣を水平に構え、その切っ先をレイモンドの喉元へと突きつけた。冷たい鋼の感触が、肌を通して死を伝えてくる。
「君という存在は、あまりに有能すぎた。僕の隣にいるには……あまりに深い影を背負いすぎている」
「……俺を、殺すのか。没落した家の生き残りを、今さら掃除しようってわけか」
「掃除、か。……フッ、いい表現だね」
セオドリックの口元が、歪に吊り上がる。それはレイモンドが見たこともない、狂気に満ちた冷笑だった。
「君の存在を、ここで終わらせよう。アシュクロフトの名も、君が積み上げてきた功績も、すべてだ。……誰も知らない、この暗がりの底でね」
「貴様……ッ!」
レイモンドは絶叫と共に、隠し持っていたナイフを突き出そうとした。
だが、それよりも早く。
セオドリックの聖剣が、月光を切り裂いて振り下ろされた。
「さらばだ、僕の影」
視界が、真っ白な閃光に呑み込まれる。
セオドリックの振り下ろした刃が、レイモンドの意識のすべてを断ち切った。
ああ……終わるのか。
信じていた光に、最も深い闇へと突き落とされる結末。
レイモンドは、薄れゆく意識の中で、自分を抱きしめるような、あまりに強い――そして、あまりに重い感触を最後に、深い奈落へと堕ちていった。
