地下礼拝堂の最奥、崩れかけたステンドグラスから差し込む月光は、まるで断頭台を照らすスポットライトのようだった。
祭壇の前に、その男は立っていた。
「……来たか、レイモンド」
セオドリックの声は、地下の静寂に冷たく、そして重く響いた。
いつも彼を包んでいた、あの春の陽だまりのような暖かさは微塵もない。逆光の中で、彼の金髪は冷酷なプラチナ色に輝き、その手には――ランカスター家に伝わる聖剣が、抜き身のまま握られていた。
レイモンドは、あまりの威圧感に足が竦みそうになるのを、袖口に隠したナイフを握りしめることでどうにか堪えた。
「セオドリック……。こんな時間に、こんな場所で……何の真似だ」
「真似ではない。これは、僕たちが避けては通れない儀式だよ」
セオドリックが、ゆっくりと歩み寄ってくる。
一歩ごとに、床に溜まった埃が舞い上がり、死の匂いが強くなる。彼の瞳には、かつての親愛の光など欠片もなかった。そこにあるのは、ただ無機質で、冷徹な、王者の決意だけだ。
「レイ。僕は決めたんだ。……影は、もう必要ない」
