深夜の学園は、昼間の賑わいが嘘のように静まり返っている。
北東にある地下礼拝堂は、百年以上も前に閉鎖された、学園の負の歴史を封じ込めた場所だ。なぜ、あんな場所を。
石造りの回廊を歩くたび、レイモンドの足音が重く響く。それはまるで、墓場へと続くカウントダウンのようだった。
(セオドリック、お前は正しい……)
レイモンドは、暗い思考の海に沈んでいく。
光り輝く未来の宰相に、没落した家の自分は相応しくない。自分がどれほど有能であっても、背負った影を消すことはできない。セオドリックという太陽を曇らせないためには、自分という月影を完全に消去するのが、最も合理的で、最も慈悲深い解決策なのだ。
(分かっている。分かっているんだ。だが――)
袖口のナイフを握りしめる拳が、白くなるほどに強張る。
かつて自分を友と呼び、絶望の淵から救い上げたあの温かい手を、自分は信じていたかった。
もし、あの日差しのような男が、目的のためなら友さえも冷徹に切り捨てる真の王へと成長したのだとしたら、これ以上の悲劇があるだろうか。
礼拝堂の入り口に辿り着いた。
腐りかけた木製の扉が、外気を受けて、ギィ……と、呻くような音を立てて開いている。
地下へと続く階段からは、湿ったカビの匂いと、微かな……しかし確かな、冷たい魔力の残滓が漂ってきた。
レイモンドは、暗闇に呑み込まれるように階段を降りていく。
一歩、また一歩。
階段を降りるごとに、かつての友情の記憶が、氷の刃となって彼の心を引き裂いていった。
