「――あ、レイ。ちょうどよかった」
陽がすっかり暮れた頃、昇降口を出ようとしていたレイモンドの肩を、セオドリックはそっと叩いた。
レイモンドはビクッと肩を震わせ、猫のように目を細める。その反応を、セオドリックは微笑ましく思った。
「……急に話しかけるな」
「ごめんごめん。ところで、来週の木曜日、少しだけ僕に時間をくれないかな。実は、一年生から相談されている魔導回路の設計、僕じゃどうしても答えが出せなくてね。君の、あの美しい術式を見せてあげてほしいんだ」
レイモンドはあからさまに嫌そうな顔をして、視線を泳がせる。
「……木曜は、予定がある」
「一人で本を読む予定だろう? 君が教壇に立つ必要はない。解説は僕がする。君はただ、いつも通りにペンを動かしてくれればいい。……君の術式は、学園の宝なんだ。それを隠しておくのは、どうしても勿体ないと思えてしまうんだよ」
セオドリックは真っ直ぐに、心からの敬意を瞳に込めた。
「……そんな大層なものじゃない」
「大層なものだよ。少なくとも、僕にとってはね」
「…………」
