深夜の工房に、カリカリと硬いペン先の音だけが響く。
あいつが「最高だ」と笑った術式を、さらに磨き上げ、補強し、あいつの暴走を食い止めるための『楔』を打ち込んでいく。
泥臭く、地味で、気の遠くなるような微調整。
華やかな光の中で魔力を振るうセオドリックとは対照的な、暗がりでの孤独な戦い。
だが、レイモンドの胸を焼いているのは、不満ではなかった。
あの完璧な男が、自分がいなければ破滅する。
その事実が、レイモンドにとっては何よりも甘美な毒だった。
「……お前の理想を、俺が形にしてやる。……だから、お前は黙って俺の手の届くところにいろ」
明け方、ようやく最後の一線を書き加えた時、レイモンドの顔には、酷く歪んだ、しかし確かな優越感が浮かんでいた。
あいつが夢見る未来を、俺が裏側から支えてやる。
それは、忠誠心などという綺麗な言葉では到底片付けられない、歪な独占欲の変形だった。
