「……くそっ、あのバカ……。寝顔だけは一丁前だな」
深い眠りに落ちているセオドリックの寝息を聞きながら、レイモンドは痺れる腕を動かして、再び作業台に向かった。
先ほどまでの熱狂的な共鳴は、レイモンドの身体に心地よい疲労と、それ以上の焦燥を残していた。
実験は成功した。だが、レイモンドの目は誤魔化せない。
セオドリックが注ぎ込んだ規格外の魔力は、今の術式では完全には受け流せていない。回路の隅々に、かすかな熱が残っている。これをこのまま放置すれば、次回の起動時には、このラボどころか実習棟ごと消し飛ぶだろう。
「あいつの理想は、いつも高すぎるんだ。……地面を歩く方法も知らないくせに、空を飛ぼうとする」
レイモンドは、充血した目で設計図を睨みつけ、再びペンを走らせる。
セオドリック・フォン・ランカスター。
未来の宰相と目される男。その頭脳も魔力も、文字通り国家規模の財産だ。だが、その強大すぎる力は、それを御せる器がなければ、ただの厄災でしかない。
(……そして、その器になれるのは、世界中で俺だけだ)
