高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 セオドリックの魔力は、本来なら制御不能な奔流だ。だが、レイモンドが構築した術式の網を通過するたび、それは驚くほど純度の高い、守護の力へと磨き上げられていく。
 レイモンドの指先が、空中に浮かぶ数式を、ピアノの鍵盤を弾くように叩く。
 セオドリックの魔力が、その指先の動きに、驚くほど正確に追従していく。

(……ああ。これだ)

 セオドリックは、深い陶酔を覚えた。
 自分の内側に渦巻く巨大な力。それを完全に理解し、正しく導き、形にしてくれるのは、この世界にレイモンド・アシュクロフトしかいない。
 他の誰かが隣に立てば、この魔力の奔流に飲み込まれ、たちまち命を落とすだろう。
 だが、レイモンドだけは、不敵な笑みさえ浮かべて、その暴風を乗りこなしている。

「セオドリック、出力を三割上げろ! 第二層を重ねるぞ!」
「了解だ、レイ! ……さあ、僕たちの理想の輝きを見せてくれ!」

 ラボ全体を、まばゆい黄金の光が包み込んだ。
 多層に重なった結界が、複雑な和音を奏でるように共鳴し、完璧な立方体となって空中に固定される。
 かつて誰も成し得なかった、攻防一体の魔導回路が完成した瞬間だった。

 二人の呼吸が重なり、魔力が溶け合う。
 レイモンドは、自分の能力がセオドリックの力によって何倍にも増幅された万能感に。
 セオドリックは、自分の理想(アイディア)がレイモンドの知性によって、現実となった充足感に、興奮を禁じ得なかった。

 光の残滓(ざんし)が舞う中、二人は肩で息をしながら、完成した魔導具を見つめる。

「やったね、レイ」
「……ああ」

 レイモンドの唇が、無意識のうちに勝利の笑みを刻んだ。
 セオドリックは、それを見逃さなかった。

(そうだ、レイ。君のその誇らしげな顔こそが、僕がこの国で最も守りたいものなんだ。……やはり、君を僕の隣から離してはならない。絶対にね)