放課後、セオドリックは密かに生徒会メンバーを集めた。
「いいかい。来週のレイモンドの誕生日パーティーは、この生徒会室で、最小限の人数で、静かに執り行う。飾り付けも派手すぎず、彼の好きなビターチョコレートのケーキと、彼が欲しがっていた魔導古書の写本だけを用意するんだ」
真剣に語るセオドリックに、書記の令嬢がおずおずと手を挙げ、不安げに尋ねた。
「でも会長……副会長は、本当に喜んでくれるでしょうか? 怒られたりしないかな、って……」
セオドリックは、春の陽だまりのような微笑を浮かべた。
「喜ばなくていいんだ。ただ、僕が彼を祝いたいだけなんだよ。彼は誰よりも頑張っている。その彼が、誰からも認められずに一年を終えるなんて、僕は許せないんだ。……これは僕の、わがままな正義だよ」
セオドリックは窓の外、夕闇に沈みかける学園を眺めた。
レイモンドは「自分なんていなくてもいい」なんて顔をして、今もどこかで雑務を片付けているのだろう。
けれど、生徒会がどれほど彼を必要としているか、自分にはそれを伝える責任がある。そのためなら、些細な嘘など取るに足らないことだ。
たとえ彼に「余計なことをするな」と睨まれたとしても。その鋭い視線こそが、彼なりの照れ隠しなのだと、セオドリックは解釈していた。
