机の上に広げられた紙面。そこには、常人の魔導師なら見ただけで眩暈を起こすような、狂気的な密度の多重回路が描かれていた。
防御の網を幾層にも重ねつつ、受けた攻撃を吸収して自身の魔力へと変換する……。理論上は不落の城塞だが、実用化するには、計算の不整合が多すぎて、起動した瞬間に術者が自爆しかねない代物だ。
「……お前、馬鹿なのか? こんなもの、魔力の流れが少しでもズレれば、ラボごと木っ端微塵だぞ」
レイモンドの罵倒に近い指摘。だが、セオドリックはそれを待っていたかのように、瞳を輝かせた。
「だからこそ君が必要なんだ。僕がどれほど壮大な夢想を語っても、それを現実に繋ぎ止める錨がなければ意味がない。そして、その錨となれるのは、世界中でレイ、君だけだ」
セオドリックは、まるで宝物を差し出すような手つきで、レイモンドの肩を優しく叩いた。
その顔は、慈悲深い聖者のようでもあり、あるいは自分の理想を叶えるための唯一の理解者を逃がさない、冷徹な政治家のようでもあった。
「君という精密な制御装置がなければ、僕の魔力はただの破壊の嵐だ。……ねえ、レイ。僕の隣で、この『不可能』を、僕たち二人の『必然』に変えてくれないかな?」
