「セオドリック……! なぜ、ここに……っ!」
「君が来ると思っていたからさ。一日の終わりに、君が最も安心できる場所へ戻ってくることを、僕は疑っていなかった」
セオドリックは立ち上がり、レイモンドへ歩み寄る。
レイモンドは慌てて解析を解こうとしたが、障壁は突然、その性質を変えた。
青白い光が淡い桃色へと変化し、暴力的なまでに心地よい、甘い香りが漂い始める。
「な……なんだ、この術式は……! 解除できない……っ!」
「安らぎの繭。触れた者の魔力を逆流し、深い眠りへと誘う……解除不可能な術式だよ」
「貴様……最初から、これを狙って……!」
レイモンドの膝が、がくりと折れた。
身体が羽毛のように軽くなり、瞼は重く垂れ下がる。
セオドリックの仕掛けた最後の罠――それは、仕事を取り戻そうとするレイモンドの執念を、そのまま眠りへのエネルギーに変換する、狡猾な愛だった。
「……もう戦わなくていいんだよ、レイ」
セオドリックの腕が、レイモンドの身体を受け止めた。
レイモンドは、力なく声を振り絞る。
「……ふざけるな。……俺は、まだ……」
「おやすみ、僕の誇り高い守護者。次に目が覚めたら……今より少しだけ、世界が明るく見えるはずだよ」
その囁きを最後に、レイモンドの意識は闇の底へと沈んでいった。
