高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


 レイモンドは、学園の北側にある旧校舎の裏庭へと逃げ込んでいた。

(……ここで、地面に図形でも描いて魔導演算をしてやる)

 だが、レイモンドが手近な枝を拾い上げ、地面に円を描こうとした、その時。

「あ、見ーっけ! 副会長、こんなところにいた!」

 鼓膜を突き刺すような、弾けるように明るい声。
 レイモンドの肩が、雷撃魔法を受けたかのように跳ね上がった。
 振り返ると、そこにはセオドリックを信奉する生徒会書記の令嬢・ミレイと、騎士科の陽気な男子学生数名が、眩しい笑顔を湛えて立っていた。

「……何の用だ。俺は今、忙しい」
「嘘おっしゃい! 会長から『副会長は今、手持ち無沙汰で寂死(さみし)しかけているから、みんなで構ってあげてくれ』って頼まれているんですよ!」

 レイモンドは絶句した。寂死などという、自分とは星の裏側ほども縁遠い概念を押し付けられ、激しい眩暈を覚える。

「さあ副会長、今から騎士科の親睦テニス大会なんです。副会長の魔導精密操作があれば、絶対面白いラリーになりますよ!」
「断る。俺は、運動など……」
「いいからいいから! ほら、ラケット貸してあげて!」

 拒絶の言葉を吐き出す前に、レイモンドの手には軽量化魔法が施された最新式のラケットが握らされていた。
 騎士科の学生たちが、親愛の情を込めて彼の背中をバンバンと叩く。その一撃ごとに、精神力が削り取られていく。