「おはよう、レイ。今日も早いね」
「お前が遅すぎるんだ。これ、午後の議題の要点だ。目を通しておけ」
差し出された書類を覗き込み、セオドリックは内心で舌を巻いた。
自分が三時間かけても解けなかった問題の解決策が、たった数行の魔法数式で鮮やかにまとめられている。
「流石だよ、レイ」
「お前も、これぐらいは解けるようにしておけ」
「うーん、それはちょっと難しいかもなぁ」
レイモンドは目立つのを徹底的に嫌い、壇上に上がることも頑なに拒み続けている。
けれど、セオドリックは知っているのだ。自分が掲げる理想の下で、誰よりも泥を被り、実務に血を通わせているのは、この無愛想な男なのだということを。
だからこそ、セオドリックは決めていた。
来週のレイモンドの誕生日は、絶対に祝わなければならない、と。
もちろん、大々的なパーティーは、彼にとって忌むべき行為であることは理解している。
セオドリックが「レイモンドを祝おう!」と一言でも口にすれば、学園中が歓喜の渦に包まれるだろうが、それは彼に対する暴力になってしまう。
だから、セオドリックは彼を尊重し、完璧な計画を練ることにした。
